自動車業界の巨人「トヨタ」が異業種との提携を進めるワケ (2/2ページ)

クルマをシェアするという考えが普及すれば販売台数は厳しくなる

 世界的に見ても、クルマが実働しているのは、一日の時間の1割ほどでしかないとされる。それは、クルマを所有することを前提としているからだ。これを共同利用にすれば、一台の稼働時間を増やすことができる。

 リチウムイオンバッテリーを実用化した旭化成の吉野 彰フェローは、AI(人工知能)を使った電気自動車(EV)を共同利用すれば、世界のクルマの台数を現在の7分の1に減らすことができるとする。なおかつ、そこで必要とされる電力は、EVの蓄電機能を活用することで賄える可能性もあるとしている。

 こうなると、今日、世界最大規模の販売台数を誇る自動車メーカーこそが淘汰の影響を強く受け、MaaSのための車台メーカーとして生き残るしか道がなくなってしまうかもしれない。そうした未来において、所有という価値がなくならないとしても、そこで選ばれる銘柄であるためには、少量生産で独自性を持つ個性豊かなメーカーである必要がある。

 トヨタに限らず、量を追い求めてきたフォルクスワーゲンやGMなどといった大手自動車メーカーほど、将来への危機感を募らせているといえる。同時にまた、年間の販売台数が200万台前後の自動車メーカーも、ブランドの生き残りをかけた特徴づけを行っているというのが、今である。

 トヨタが繰り広げる他業種との提携が、どのような成果を得るかは見通せない。また、トヨタが目指す未来の交通社会の具体像も明らかではない。だが、布石を打っていかなければ出遅れ、淘汰されてしまうとの危機感が、旺盛な提携の動きになっているのではないだろうか。また、そこまで未来を想像しているのも、トヨタのほかにはないともいえる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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