ふとしたきっかけから採用されたビルシュタインダンパー
ターボ人気がすごすぎてまったく注目されなかったものの、じつは廉価な実用グレードに搭載されるSOHC1.8リッターのEJ18も大幅なポテンシャルアップがはかられている点にも注目したい。圧縮比を9.5から9.7へアップしたのをはじめ、ノックセンサー採用、インテークポート通気抵抗低減、インテークマニホールド長短縮、エアクリーナー一体型中速トルクアップチャンバー採用、低粘度オイル採用、低フリクションピストン採用、シリンダーヘッド冷却性向上など、じつに内容の濃い改良が加えられた。
また、NAの2リッターはリーンバーンエンジンとして、クラストップレベルの低燃費性能を実現。ターボは気持ち良すぎてアクセルを踏みすぎてしまうことの代償として、初代に続き2代目でも極悪燃費のレッテルを貼られてしまうことになったが、じつはよく見ると2代目でも、2リッター車格の4WDとしては優れた燃費性能を実現していたといえたのである。
まだまだ特筆ポイントはたくさんあるが、ここでは今のSUBARUのトップスポーツモデルにも採用され続けているビルシュタインダンパーについてあらためて注目しておきたい。
そもそも、2代目レガシィ後期型で初採用されたビルシュタイン社製の倒立式ダンパーは、STIの強化パーツ商品として先行開発が進められていたものだった。STIの開発現場にサポートメンバーとして参加していた富士重工業の実験部隊のメンバーのひとりが、あまりの乗り味の良さに衝撃を覚え、富士重工業でレガシィのサスペンション開発を担当していた高津益夫さんに興奮しながら電話したことがきっかけとなり、レガシィ量産グレード採用への流れに変わった。
当時はサスペンションのマルチリンク化が流行しており、当然当時の富士重工業でも3代目レガシィ用にマルチリンクの先行開発をしていたが、高津さんは初めてビルシュタイン社製の倒立ストラットがもたらす走りの良さを体感したとき、倒立ストラットのポテンシャルに激しく感動。乗り心地はしなやかなのに安定性が高く、ワゴンボディの上家のバネ揺れもしっかり抑えてくれる。まさに、高出力化されたレガシィに求められるダンパーだった。レガシィのトップグレードにはその後もビルシュタインダンパーが採用され続け、その後の4代目レガシィでもサスペンション設計を担当した高津益夫さんとビルシュタイン社の関係もさらに深いものになっていく。
2代目レガシィは、スバリストのみならず多くのクルマ好きに喜びと感動を与えた傑作車として、今もなお語り継がれている。ステーションワゴンの文化を深化させ、レガシィというクルマの存在感を圧倒的なものとした功績は大きい。