マイチェンで量産2リッターターボ世界初の280馬力を実現
パワーユニットは、トップスポーツグレードに搭載された2ステージツインターボに衝撃を受けた人は多いはず。狙いはピークパワーの向上よりも、初代で顕著だった低回転域のトルクの細さを補いターボラグを低減させ、実用燃費を向上させることにあった。
前期型250馬力仕様のタービンのA/R比(タービンノズル断面積/タービン径)は、初代RSが20、GTが15であったのに対し、12(×2機)と小さくし、タービンのシャフトはボールベアリング支持とするなどして、アクセルレスポンスを向上。タービンが切り替わるときに感じられる「トルクの谷間」が問題視されることにもなったが、同じEJ20ターボでも、初代レガシィや初代WRX用とはまったく異なる出力特性は2代目レガシィの強烈な個性となった。
とにかくターボのワゴンがよく売れたので、それ以外の印象が薄れてしまった感が否めないものの、NAユニットでは4ブランチY型等長エキゾーストを採用して静粛性を大幅に向上。上級志向の250T、最低地上高200mm確保のクロスオーバー車グランドワゴンなど、グレード展開も拡大された。
トランスミッションでは、ターボのAT車にアルシオーネSVXで初採用されたハンドリング重視の常時四輪駆動システムであるVTD-4WDに注目。駆動トルク配分の後輪重視制御ならではのスムースな回頭性と操舵レスポンスの良さなど、自然なハンドリングを実現した。この時代の前後駆動配分は前35:後65で、雪道などではオーバーステア気味な状態になると、直結4WD化してスピンを防ぐ挙動が楽しめる。VDCやESPがまだ一部の高級車にしか装備されない時代にあって、アクティブなドライビングスタイルのドライバーから初心者まで絶大な支持を受けた。
前期型のままでも当時のクルマ好きに十分なインパクトを与えた2代目レガシィ。しかし、さらなる圧巻は、1996年6月24日に実施されたビッグマイナーチェンジでの劇的な性能向上にある。量産2リッター車世界初の280馬力化や、当時の5ナンバー車としては大径といえる17インチホイール、そして量産車としては世界的にもほかに例のなかった倒立式ストラットのビルシュタインダンパーで武装。ワゴンに設定された新グレード「GT-B」の衝撃は凄まじく、これが超大ヒット。1996年のレガシィの販売台数は9万台を超え、新車ランキングのベスト10入り。1997年には月販1.3万台を超えるなど、空前の大人気となった。
「BOXER MASTER-4」と呼ばれた新エンジンはターボMTの280馬力化に注目が集まるものの、本質的な狙いはピークパワーの向上ではなく、トルク特性の改善と低燃費化にあった。
当時の車両研究実験総括部でレガシィ担当の主査を務めた大林真悟さんは、「280馬力という数字にこだわった訳ではなく、レガシィというクルマを気持ちよく走らせるにはどうすれば良いか? を追求しているうちに280馬力になりました。前期型250馬力時代の2代目レガシィに対し、よりスポーティで高回転域で伸びのあるパワーフィールを追求した結果の280馬力だったのです」と語る。