パニック状態を検知して停車する技術が必要
結論としてクルマが原因となる暴走というのは、非常に考えづらいといえます。暴走事故のほとんどはペダルの踏み間違えが原因であり、そうでなければドライバーの意識混濁などの疾患が疑われます。アクセルペダルを踏み込んだ状態でペダルがフロアマットに挟まってしまい戻らなくなるというケースもあり得ますが、正規の状態ではそうしたアクシデントが起きないように設計されていますし、ブレーキを踏めば少なくとも減速はできるはずです。将来的にコネクテッドカーが増えてくると車両側のECUがハッキングされて暴走するケースというのも出てきそうですが、スタンドアロンで走っているクルマに対して、そうした心配をするのは杞憂というものです。
冒頭で記した「サポカーS」に認められるには、ペダルの踏み間違えに対応した「加速抑制装置」を装備していることが条件のひとつですが、こうした機能の標準装備化がペダル踏み間違えに起因する暴走事故を低減するには有効でしょう。ペダルの踏み間違え事故は高齢ドライバーだけが起こしているわけではなく、どの年齢層でも起きています。高齢者から運転免許を奪ってもなくなるわけではないのです。技術的に可能であれば、その普及を目指すのが事故低減にはもっとも有効といえます。
さらに将来的にはドライバーの状態を把握して、暴走を防ぐ機能の実装も期待をしたいところといえます。すでにトラックやバスにはドライバーモニターシステムが存在しています。ドライバーに異常が発生したことを知らせるシステムも実現されています(例:日野セレガのEDSS)。乗用車でも居眠りや脇見に対して注意喚起するシステムをSUBARUがフォレスターの上級グレードに装備していたりします。こうした技術の先には、ドライバーの異常を検知してクルマを安全に停止させる機能が見えてくるのではないでしょうか。
ドライバーがパニック状態に陥っていることを検知する機能の実装はハードルが高いかもしれませんが、昨今の暴走事故に対する社会的な反応を見ていると、周囲の状況をモニタリングして安全に停止させる先進安全装備が求められているといえそうです。もっとも、ドライバーが介在しないレベルの自動運動が実現すれば、ヒューマンエラーによる交通事故全般が解消されますから、自動運動テクノロジーの進化を社会が求めているともいえるでしょう。