「ブレーキを踏んでいたのに加速した」との供述も! 高齢者による事故でクルマに問題がある可能性はあるのか? (1/2ページ)

踏み間違えしやすい車両の存在は考えにくい

 高齢ドライバーによる交通事故が社会的に注目を集めています。また、ドライバーの年齢にかかわらずペダルの踏み間違えによる事故への対策も進んでいます。そうした対策のひとつとして、日本政府は「サポカー/サポカーS」の愛称を付けて、先進安全装備搭載車の普及を推進しています。官民あげて対策をしようとしている状況です。

 さて、ペダルの踏み間違え事故について当事者は「ブレーキペダルを踏んでいたのにクルマが加速した」などとコメントしたと報道で伝えられることがあります。そうした報道を目にすると、すわ「車両側のトラブルではないか!」と思いがちですが、調べるとペダルの踏み間違えと結論づけられることがほとんどです。

 実際、ブレーキペダルを踏んでクルマが加速するということは考えられません。ブレーキペダルの下に空き缶などが挟まってブレーキペダルを踏めないというトラブルは起き得ますし、フェード現象などのブレーキトラブルが起きればペダルを踏んでも制動力が立ち上がらないこともあり得ます。仮にバイワイヤ(電気信号で作動させる仕組み)のクルマだとして、ブレーキとアクセルの配線を入れ替えるようなことをすればブレーキペダルを踏んで加速するといった現象も起きるかもしれませんが、故意に配線を入れ替えたのでなく、走行中にペダルからの信号が混線してしまうというのは仮説としても検討する価値があるとは思えません。

 また「ペダルの配置によって踏み間違えを誘発するクルマがあるのでは?」という指摘もあるようですが、ペダルの踏み間違えに気付かず、アクセルペダルをブレーキペダルだと思い込んで踏み続けるようなパニック状態に対して、ペダルの位置が影響しているというのも考えづらいといえます。

 日常的に自然な姿勢で運転できる理想的なポジションというのは存在しますし、理想的ではないクルマが少なからず売られていることも否定はしませんが、少なくとも日々運転している“マイカー”においてペダルレイアウトの良し悪しと踏み間違えの因果関係を求めるのは筋が悪いのではないでしょうか。買い換えた直後ならまだしも、多くのドライバーはマイカーの配置には慣れてしまうものだからです。もちろん、とっさのときに、かつて乗っていたクルマのクセが出てしまうことがあるかもしれませんが、そこまでいくと個人差の話であって車両側の問題とも言いづらいでしょう。

 なお余談ながら、カーシェアリングのように色々なクルマを運転するといった運用が広まってくると、ドライバーの慣れという条件を排除できる可能性があるので「ペダルの踏み間違えをしやすいクルマ」というのは傾向が見えてくるかもしれませんが……。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
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