名はビッグでも販売台数は……ジリ貧でも日産がスカイラインの名にこだわり続けるワケ (2/2ページ)

日本で展開していないインフィニティ車へ名付けるには最適解

 この時期、スカイラインを販売していた「日産プリンス店」という販売網は「日産レッドステージ」として再編されており、スカイラインの名前を残す必要性もなかったのは事実だが、既存顧客の受け皿としてスカイラインという名前は必要だったのだろう。多数の販売網をいきなりひとつにまとめるのは難しく、もう一方で「日産ブルーステージ」という販売網に整理しており、スカイラインの既存ユーザーが求めるであろう4ドアのFRセダンである「ローレル」はブルーステージの取り扱いだったことも、その理由といえる。

 しかもローレルはV35スカイラインの登場以降も継続生産されていた。もし、1999年から行われた日産販売網の再編が「レッドステージ」と「ブルーステージ」に分けることなく、いきなり統合することができていれば、9代目となる「V35」に「スカイライン」の名前は与えられず、その名前は消滅していたかもしれない。

 そもそも「V」系のスカイラインは、海外では「インフィニティ」ブランドで、「G35」や「Q50」といった車名で販売されている。現行スカイラインは、インフィニティのエンブレムをフロントグリルなどに堂々と掲げるなど脱スカイラインを意識していることが感じられる。仮に、2001年の段階で日産が日本国内においてもインフィニティの販売網を立ち上げていれば、その段階でスカイラインの名前は消え、インフィニティのラインアップとして販売されていたことだろう。

 逆にいえば、インフィニティのミドルサイズセダン&クーペとして開発したモデルを、インフィニティ・ブランドを展開していない日本で売るにあたって、最適な名前として「スカイライン」が選ばれたという見方もできる。

 おそらく日本市場の現状から考えるに、この国でインフィニティ・ブランドを立ち上げることはないだろう。そうなるとインフィニティ向けに開発したモデルを日本で売るには日産の名前を付ける必要がある。まったく新しい名前をつけてブランディングをするというエネルギーがないのであれば、既存の認知されている名前を使うというのが、消極的ではあるが、最適解といえる。そう考えると、「V」系のモデルに「スカイライン」という名前を付けていることは理解できるのではないだろうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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