ハイブリッド王国だったトヨタがようやくEV市場本格参入を発表! なぜ今なのか? (3/3ページ)

TNGAの応用がEVのラインアップ拡大の肝に

 80点主義の点数をつけるのはユーザーである。つまり市場が求めるならば、トヨタは100%電気自動車を出すことに積極的になれる。実際、2019年4月に開催された上海モーターショーにおいて、トヨタはC-HRベースの電気自動車を世界初公開、2020年に販売することを発表した。

 政策面から電気自動車を推進する中国市場において、電気自動車をローンチするということは目の肥えたユーザーを満足させる必要がある。まさに満を持しての電気自動車の投入であり、さまざまな電動車両で培ったノウハウは、電気自動車に応用できるという見方を証明することになりそうだ。

 もっとも、100%電気自動車はほかの電動車両と比べて、バッテリーの使い方が異なるという違いがある。簡単にいうとハイブリッドカーではバッテリーの狭い範囲を使うことで長寿命を考慮することができるが、電気自動車は航続距離を稼ぐためにバッテリーの能力をギリギリまで引き出すことが求められる。そうした違いについてトヨタは百も承知だろう。耐久性や実用性をどのようにバランスさせてくるか。他メーカーも戦々恐々だろう。

 こうして地域ニーズに合わせて電気自動車を出しつつ、世界的に100%電気自動車へシフトしないのは、現在の技術レベルではグローバルにニーズを満たす電気自動車を生み出すことは難しく、目前のCO2規制にはハイブリッドカーが有効と判断しているからといえる。しかし、電気自動車の将来性がないと判断しているわけではない。上海モーターショーでは、C-HRの電気自動車を皮切りに、2020年代前半にはグローバルに10車種以上の電気自動車を展開すると発表した。

 C-HRの基本設計がTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)に基づいていることは知られている。つまりTNGAは電気自動車を考慮したアーキテクチャーであるといえる。そう考えれば、数年内にグローバル10車種の電気自動車を展開するという発表は、非常にリアリティのあるものだと理解できる。

「いつでも電気自動車を出せる」という可能性を感じさせてきたトヨタが、ついに電気自動車の市販化を本格始動させた。価格や性能、量産性など多くのハードルはあるはずだが、トヨタは軽やかに越えていくのだろうか。今後の展開に注目したい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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