ハイブリッド王国だったトヨタがようやくEV市場本格参入を発表! なぜ今なのか? (2/3ページ)

安易にリリースしなかったトヨタの強いこだわり

 環境性能におけるポテンシャルが高い電気自動車のシェアが拡大しないのには、そのコストと航続距離という課題が、まだクリアできていないからだ。バッテリーを多量に積めば航続距離を伸ばすことはできるが、バッテリー搭載量はそのまま車両コストに反映され、価格が上がってしまう。またバッテリーは重いため、やみくもに積んでしまうと自重が航続距離やパフォーマンスにおいてネガとなってしまうという面もある。現在のユーザーニーズを満たす航続距離やコスト(車両価格)といった課題がクリアできないため、一気に電気自動車にシフトすることは難しいのだ。

 その課題について、トヨタの関係者から過去に面白いたとえ話を聞いたことがある。「電気自動車の満充電(での走行可能距離)というのは、エンジン車でいえば燃料計がゼロを指しそうなそうな状態であって、そのレベルでは売ることはできない」という内容だった。それは実質的な航続距離が100km台という初代・日産リーフを意識して発言だったが、ユーザーニーズを満たさない状態では商品として成立しないというのはトヨタらしい見方と感じた。

 トヨタのクルマ作りの根幹を示すのに「80点主義」という言葉を使うことがある。これは、まんべんなく80点(合格点)を満たしていればいいということではない。100点の要素があるから60点の要素があってもいいというのはNGで、あらゆる要素で80点以上を目指すという意味だ。その80点主義からすると、従来の自動車として求められる航続距離について80点に及ばない電気自動車は市販することはできないということなる。

 逆に、近距離ユースでしか使わないという商品企画であって、航続距離が短くてもユーザーニーズを満たせば電気自動車を出すことはやぶさかでないということだ。トヨタ本体ではないが、トヨタ車体が「コムス」というひとり乗り電気自動車(日本ではミニカー登録になる)を量産している。この「コムス」はコンビニなどの宅配用として広く使われているのは知られているところ。もし乗用車においてもシェアリングなどで短距離ユースがメインになるのであれば電気自動車でも十分にニーズを満たせることになる。

 ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、燃料電池車といろいろな電動車両を生産・販売しているトヨタにとって、電気自動車を作ることは容易という指摘もあった。たしかにプラグインハイブリッドカーからエンジンを外せば、電気自動車の構成要素を満たすわけで、トヨタは電気自動車を作る技術を持っていないという指摘は間違いだ。

 さらに電気自動車の共通アーキテクチャーを開発する技術研究の合弁企業「EV C.A. Spirit」をトヨタとデンソー、そしてマツダで設立。現在は、SUBARU、スズキ、ダイハツ、日野、いすゞ、ヤマハといった錚々たるメンバーが名を連ねている。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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