理論派レーシングドライバーが斬る! 走りに納得できるハイブリッドスポーツカーが存在しないワケ (3/3ページ)

納得のいくハイブリッドスポーツの登場が先かEVに先を越されるか

 しかしだ。モータースポーツの最高峰であるF1もWEC(世界耐久選手権)の頂点で覇権を争うLMP−1カテゴリーのマシンもエンジン+モーターのハイブリッドだ。こうした極限で鍛えられたハイブリッド技術なら市販車に転用されても大きな感動を与えてくれるに違いない。メルセデス・AMGはF1マシンのパワートレインをそのまま搭載した「プロジェクトワン」を約3億円で275台を生産し完売した。

 またトヨタもル・マン24時間を制したLMP-1マシンのパワートレインを移植した「GR スーパースポーツコンセプト」を100万ドルで市販すると予想されている。ポルシェは918スパイダーハイブリッドで独・ニュルブルクリンクのラップレコードを樹立し、長く保持していた。

 ハイブリッドスポーツが持つ本来の可能性を我々が気軽に引き出し、楽しめるようになるには、まだもう少し時間がかかるか、あるいはEVに先を越され、もう登場しないのかもしれない。

 先頃トヨタが発表した「ハイブリッド基幹技術特許の無償提供」が我々にも手の届く「走りのいい」ハイブリッドスポーツ車登場のきっかけになればと期待している。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
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趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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