レースのノウハウを注ぎ込んだワゴン版WRX的存在
クルマ好きの心をつかむため、走行性能はレガシィ時代よりも高い次元のスポーツ性を追求。レヴォーグの操縦安定性を仕上げた市澤 眞さんは、4代目レガシィの時代まで、スバル車の操縦安定性の味を決めてきた辰己英治さんの後継者のひとりで、辰己さんの持論である“ただ剛性を上げるだけではなく、ある部分はしなやかに仕立てて路面からの入力をいなすボディ作り”の考え方に基づいて、レヴォーグの走りは煮詰められた。
そのノウハウの礎となっているのは「WRC」や「スーパーGT」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」などモータースポーツのトップカテゴリーへの参戦。レヴォーグはワゴンでありながら、SUBARUのモータースポーツ参戦マシンのDNAも継承された稀有な存在といえる。
そもそも、SUBARUのトップスポーツモデルである「WRX」と共通した部分が多いことも、レヴォーグの走りのポテンシャルの高さを裏づける。
たとえば、初期型のサスペンションのスプリングのばねレートは従来型比で倍以上の5〜6kgという、実用車としては異例の硬さを採用。ステアリングギヤボックスのマウントブッシュは、5代目レガシィ比で230%もばね定数を高め、キレ味のある微小舵応答性を実現している。上級グレードでは、アルミ製ロアアームやピロボールブッシュも採用。これらは、強くてしなやかなボディがあってこそのセッティングで、レヴォーグはワゴンらしからぬ高次元の運動性能を確保できた。
初期型では乗り心地が硬すぎる、あるいはリヤサスのダンピングが足りない、などとサスペンションの味付けに対する不満点が指摘されることもあったが、年次改良で対応。トップグレードとして「STIスポーツ」を追加してからは、それ以外のグレードが全体的にマイルドな方向に修正されている。
パワートレインでは、トランスミッションがCVTであることを不満とする声も多いが、300馬力の高出力でも20万km以上メンテナンスフリーで済む(フルード交換は必要)など、耐久性では多段式ATやデュアルクラッチ式ATより圧倒的に有利であるなど、総合的にはもっと高く評価されるべき事実もある。発進加速タイムを計測すれば、同レベルの動力性能をもつMT車よりも速い結果が得られることも。
ほかにも、レオーネ時代から培われた荷室のユーティリティ性や、運転支援システムのアイサイトなども高い人気を博したポイントといえるだろう。