もっとも走りを楽しめた輸入ハイブリッド車は生産終了
またカムリは一般道の試乗ではサスペンションセッティングが固く感じられ高級なセダンとしての質感に疑問を感じさせられたが、サーキットで走らせたらハンドリングは抜群に良かった。
大柄な車体とワイドトレッドのFF(前輪駆動)ながらタイトターンではステアリングを切り増すと旋回性がどんどん高まりアンダーステアが弱い。限界域に追い込めば追い込むほどしっかりと旋回力を発揮していく。
サーキットでサスセッティングをしたのか、と思わせるほどタイトターンの旋回特性に優れていた。ハイスピードコーナー域になるとタイヤグリップと慣性重量の大きさでアウトにはらんでしまうから低速コーナーに限定した話だが、ミニサーキットやワインディングのタイトターンでは十分に楽しめる。カムリの試乗会はミニサーキットで行うべきだったと感じさせられるほどの出来だった。
一方、輸入車のHVモデルも走りの良さでは負けてはいない。BMWやメルセデス・ベンツにもフルHVモデルが存在し、その走りはガソリン仕様と同等にいい。輸入車の特徴はHVといえども燃費に特化せず、まずはガソリンエンジンでしっかりとパワーを引き出し、モーターは低速走行時かガソリンエンジンのアシストに徹する制御としている例が多い。
ハイパワーエンジンを搭載していれば、それだけでも十分に速く、シャシー性能は元より高いので走りが良く仕上げられる。渋滞時のアイドルストップやコースティング(惰性)走行、低速時のEV走行などで実燃費を引き上げるが、実燃費ではトヨタのHVに及ばない。
そのなかで、僕がもっとも評価していたのはメルセデス・ベンツS300hだった。エンジンはコンパクトな2.1リッター直4ディーゼルターボを搭載。これに27馬力のモーターを直列に配置したもの。Sクラスには6リッターV型12気筒エンジンを搭載するガソリンモデルがハイエンドに設定されており、HVながらむしろ軽量に仕上げられている。
特徴的なのはディーゼルエンジンを搭載したことで、もともと低速域で広く大きなトルクバンドを持つディーゼルエンジンと0回転から最大トルクを発生するモーターとの相性が良かったといえる。エンジンとモーターが似たようなトルク特性にあるため補完しあうのが自然で、違和感がなく力強い。
ディーゼルエンジン自体の燃費効率もよく実用燃費も圧倒的に高くトヨタのHVモデルに市街地でも高速でも負けない実燃費性能を誇っていた。
加えて通常の欧州車はハイオクガソリン仕様であるのに対しS300hはディーゼルの軽油で済むため燃費コストは圧倒的に安く済む。
走りも燃費も維持費的にも優れたS300hだったが、メルセデスはこのモデルの生産をやめてしまい、現行のHVモデルは3.5リッターV6ガソリン+モーターのS400hへと切り替えてしまった。