緊急回避に役立つテクも教えるべき
ほとんどの人が免許を取ったときにお世話になった自動車教習所。免許取得のための有益な技術と知識を教えてもらったにもかかわらず、自動車学校を母校と呼ぶ人はいない……。
実際、世のなかの学校で、これだけ実用性のあることを教えてくれるところも少ないはずだが、それでも教習所で教わったことが、実際の路上ではあまり役に立たないというか、無意味でマイナスでしかないということもいくつかある。それを検証してみよう。
1) ポンピングブレーキ
ブレーキの際、何度か踏み分けてペダルを踏むポンピングブレーキ。本来はブレーキがロックしたときのロック解除が目的だが、後続車にブレーキによる減速を知らせ、注意喚起するための「予備制動」も含まれる場合がある。
しかし、現在ではポンピングブレーキは百害あって一利なし。ABS付のクルマなら、人間がペダル操作でブレーキロックを対処するより、ABS任せの方が何倍も高精度で、安全かつ最短距離で減速できるので、ポンピングブレーキなど不要。
仮にABSのないクルマでも、ドライのアスファルトなら80㎞/h以下、ウェットなら40㎞/h以下、雪道でも20㎞/h、凍結路でも5km/h以下なら、ポンピングブレーキより、フルロックさせた方が短距離で止まるというデータがあるので、少なくとも素人がポンピングブレーキをやるメリットはまったくない。
注意喚起の「予備制動」も、後続車にとっては迷惑なだけだし、荷重変動が起きてクルマが不安定になるだけで、同乗者も気持ち悪くなるだけ。
2) 「急」のつく操作をするのはNG
通常の運転や、雪道では「急」のつく操作は厳禁とされているが、とっさのときは逆に急ブレーキの出番となる。
同じ教習所でも、オートバイの教習では「急制動」というフルブレーキのプログラムがあるが、これは実践的で非常に有用。クルマの教習でも、ぜひともABSを効かせるようなフルブレーキのトレーニングを取り入れてもらいたいものだ(一応、技能教習に「急ブレーキ」という項目があるが、体験レベルでしかない)。
なお急ハンドルはとっさのときでも、それなりのリスクがあり、急アクセルは危機回避には出番がない……。
コーナリング中はブレーキを踏んではいけないという教えもあるが、オーバースピードで曲がりきれないと感じたら、コーナリング中でもブレーキを踏むしかない。「危ない」と思ったときは、とにかくブレーキを踏んで速度を下げる。これがリスクを減らす最大のコツだ。