市場の冷え込みで値引きの大きい車種が多いなか強気のクルマも
今の日本車メーカーは、国内市場よりも海外を重視する。各地域の販売比率も、ダイハツを除くと国内市場は20%以下だ。世界生産台数の80%以上を海外で売る。
そうなれば国内向けの商品開発も滞り、以前に比べると新型車の数が減った。売れ行きが一層下がる悪循環に陥っている。
その結果、発売から5年以上を経過した設計の古い車種が増えて、相応の値引きをしないと売れない。値引きが少ない強気の車種は減った。
仮に車両本体からの値引きを戦略的に抑えても、下取り車を高く買い取るなど、商談では融通を利かせることが多い。メーカーは「値引きを抑えてリセールバリュー(数年後に中古車として販売する時の価値)を高め、ブランド力を向上させろ」などというが、販売会社はクルマを売らなければ何も始まらない。強気の商売をしたら売れ行きが下がり、各種の代行手数料、車検や点検の仕事、保険の取り扱いなども逃してしまう。
ただし、それでも値引きの少ない車種はある。
1)ダイハツ・ミライース
まずは「値引きをしたくても無理なクルマ」だ。代表は低価格の軽自動車で、卸値に対して価格が安く、販売会社の受け取る1台当たりの粗利が少ない。値引きは販売会社の粗利から捻出するため、物理的に値引きできない事情がある。
代表はダイハツ・ミライースだ。B・SA IIIは、緊急自動ブレーキのスマートアシストIIIやコーナーセンサーを標準装着して、価格は90万7200円と安い。販売店では「値引きができるとすれば、ディーラーオプションのカーナビなどに限られる。粗利が少額だから、車両本体の値引きはほとんど無理(ゼロではないが)。販売するメリットは、車検や保険の取り扱いになる」という。
2)スズキ・ジムニー
ジムニーは最上級グレードとなるXCの価格が184万1400円、中級のXLでも167万9400円(価格は4速AT仕様)と高い。1台当たりの粗利も多そうだが、値引きは少額だ。
その理由は受注が多いことにある。販売店では「現時点(2019年3月中旬)でも納期は約1年間」という。
ジムニーは生産規模が小さく、発売時点の1年間の販売計画は1万5000台だった(ジムニーシエラは1200台)。スズキスペーシアの2018年(暦年)の届け出台数は15万2104台だから、ジムニーは約10%だ。ジムニーは2018年7月に20年ぶりのフルモデルチェンジを行い、需要が急増して、長期の納期遅延に陥った。今は多少増産しているが、納期はいっこうに縮まらない。
そうなるとスズキとしては、わざわざ値引きして売る必要はなく、少額になった。