今後義務化される新燃費基準「WLTCモード」と従来の「JC08モード」がカタログに混在するワケ (2/2ページ)

JC08モード表記のライバルに燃費で負けたくないための併記か

 逆に継続生産車であっても、2020年9月1日以降はWLTCモードが義務化となるので、そこまで販売する予定であれば、マイナーチェンジなどに合わせてWLTCモードに変更することは合理的な判断となる。前述したデミオのケースは、まさにこのパターンだ。ちなみに、2018年12月に登場したホンダ・インサイトのカタログにはJC08モードとWLTCモードが併記されている。

 おそらく、これはWLTCモードだと数値が悪くなる傾向にあることが理由だと予想される。燃費性能でライバルと比較されるモデルの場合、仮に販売現場で「燃費の測定モードが異なるので数字を比べないでください」といっても意味はないだろうし、それ以前にカタログスペックで比較するユーザーの誤解を解くことは難しい。であれば、JC08モードのクルマとも比べやすいように、両モードを併記することは販売戦略上からも必要となってくるのだろう。

 ユーザー目線でいえば、WLTCモードは市街地・郊外・高速道路と3つのモードでの燃費を記しているのはクルマ選びのヒントになる。先ほど名前を挙げたマツダ・デミオ(1.5リッターガソリン・6速MT)の場合、WLTCモードの燃費は19.8km/Lで、市街地15.4km/L、郊外20.6km/L、高速道路22.0km/Lとなっている。つまり高速巡行で燃費が伸びるタイプのキャラクターといえる。(写真はディーゼル仕様)

 しかし、2モーターハイブリッドのホンダ・インサイト(LXグレード)ではWLTCモードが28.4km/L、市街地25.8km/L・郊外29.7km/L・高速道路28.8km/Lとなり、信号や渋滞の影響をあまり受けない郊外が得意なパワートレインであることが見て取れる。少々マニアックな目線かもしれないが、こうした車種ごとの特性を知ることができるようになったのも、WLTCモードを採用したことで生まれたユーザーメリットのひとつだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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