マシンのフィーリングが手に取るように伝わる
メガーヌそのものの素性の良さに期待値が高まったところで、いよいよ待望のR.S.カップです。こちらはトラクションコントロールもOFFになる「レース」モードで走行しました。
まずピットアウトした瞬間に感じたのは「思ったよりも速い!」でした。当然ながら、スポーツツアラーGTとは加速が全然違います。
スポーツツアラーGTは1.6リッター直4ターボで205馬力&280N・m、トランスミッションは7速のDCTですが、R.S.カップは279馬力&390N・mの1.8リッター直4ターボで6速MTとの組み合わせ。パワー・トルクとも3割近くアップしていますが、それでいて全然ドッカンターボではなく、急にパワーが出て挙動が乱れることがなかったのは意外でした。正直ある程度はドッカンだろうと想定しており、実際にその気配を感じられると加速を躊躇してしまうのですが、その心配は不要でしたね。
コースインして1コーナーに入ると、FF車とは思えないほどメチャクチャ少ない舵角でターンインできることに本当に驚きました。ブレーキを残しすぎると、この路面コンディションではリヤが巻き込んでくるくらいです。それに、荷重移動に対するクルマの動きがリニアですね。またそのときのブレーキも、踏力に応じてリニアに効いてくれるので、とても安心感がありました。
R.S.はスポーツツアラーGTよりもサスペンションが硬くて旋回時のロールが少なく、今回試乗した「カップ」は6速EDC車よりもさらに、スプリングレートがフロント23%/リヤ35%、ダンパー減衰力が前後とも25%、フロントスタビライザーの剛性が7%高いそうです。しかしながら、クリッピングポイントで縁石に乗っても、車体が跳ねたり大きな振動が出たりすることはなく、とてもしなやかですね。これは、セカンダリーダンパーを内蔵する四輪HCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)のバンプストッパーが10mm長くなったことが効いているのだと思います。
そして立ち上がりでは、この「カップ」に装着されたトルセンLSDが確かに効いていて、アクセルオンに応じてクルマを力強く前へ推し進めようとしてくれますね。でもトルクステアが出たり、逆にステアリングを戻している途中で固まるような感触はありませんでした。
続く2コーナーの進入はブラインドになっていて、コーナーの形がわかりにくいのですが、そこで突っ込みすぎてアクセルを急激に戻す……という、挙動を乱しやすい状況を意図的に試してみても、「これ以上いったら滑り出すな」というのがわかりやすいので、コントロールは比較的容易です。
なお6速MTですが、アクセルペダルとブレーキペダルの間隔がちょうどよく、クルマをギクシャクさせずに回転を合わせることができました。またクラッチペダルはエンジンのトルクが大きい割には軽かったのが意外でしたね。
インフィールドの5・6・7コーナーは徐々にRがキツくなるうえ下り坂の複合コーナーで滑りやすいのですが、こういう所であえて急激な操作をしてみても、すべてがリニアに反応してくれるので、もう公道を走る市販車とは思えないほど、ものすごく安心感がありましたね。新型メガーヌのGT Line以外が採用している4輪操舵システム「4コントロール」も、その制御の存在を感じさせることはなく、クルマ全体の動きをリニアにするのを手助けしてくれているようでした。