「デリカらしさを守りながら新時代に応えるデリカを!」デザイナーが込めた想いを直撃 (2/3ページ)

膨大な課題の一個一個の答えを手探りで探し続けた

 デジタルデザイン担当の山本行一郎さんと、エクステリアデザイン担当の野田健一さんにもうかがった。

「新型の縦型ライトは外側へ縦に5つのLEDが入っていますが、それぞれの役割に応じて光は違う角度を狙う必要がありますし、また、それを囲むリフレクターの角度もひとつひとつ異なります。つまり、そのまま作っただけでは、全体で見たときの光り方や、消灯した際のリフレクターの輝き方がバラバラになってしまうんです」

「そのためこの縦型ライトでは、全体で統一感のある光り方を実現するため、デジタルデータでもシミュレーションを重ねながら、一般的なライトデザインではやらないような細かい修正作業を何度も何度も重ねて追い込む必要がありました」(山本さん)

「コンマミリ単位の角度や位置にもこだわらなきゃいけませんし、テールランプとのバランスが取れていないと、全体の調和も崩れます。光り方の厚みも重要でした。細く光ってしまうと、力強いデザインが台無しになってしまいます。膨大な課題のひとつひとつについて、手探りで答えを探し続けたような感じでしたね」(野田さん)

 こうして作り上げられた斬新なヘッドライトデザインは、「ダイナミックシールド」自体が新たなステージに上がったようなデザインとなった。力強さと押し出し感が表現されたフロントグリルと、それに呼応するように巧みにバランスが取られたバンパー下部分の組み合わせも、塊感の強さや、乗員がしっかりと守られているような印象をより際立てていると言える。

 フロントマスクでは、ボンネットにも注目したい。柔らかく上質な面に、映り込みが美しいグラデーションを描くボンネットは、グリルやライトなどの“強い”見た目との対比がもたらす絶妙な上質感によって、デリカD:5が押し出しの強さだけを追求したクルマではないことを感じさせる。クレイモデル製作を担当した中尾成良さんは次のように語る。

「燃費性能の向上が当然となっている昨今では、板金にも軽さが求められます。ですがこれだけシンプルなデザインとなると、張り剛性が足りなくなってしまいます。きついプレスラインを足したりすれば簡単に解決できますが、それではデザインのよさである上質感が実現できません。シンプルな美しさと張り剛性の両立のために、何度も何度もトライ&エラーを繰り返しました」

モデリング
立体モデルの検証で細部を熟成。SUVらしい力強さや頑強さの継承を意識しながら、モダンに洗練された方向性を目指した。アーバンギアではより都会的で力強い表現を狙っている。

ファイナルレンダリング
三菱自動車の新デザイン哲学の象徴である「ダイナミックシールド」に、機能的なライトレイアウトを融合したフロントマスク。プロテクト感と機能性の高い次元での両立を目指した。

ファイナルモデル
スタンダードとアーバンギアの“飛距離”の最良のバランスを探るため、一方を修正すれば、それに合わせてもう一方も修正という、気の遠くなるような繰り返しが行なわれた。


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