「デリカらしさを守りながら新時代に応えるデリカを!」デザイナーが込めた想いを直撃 (1/3ページ)

時代の変化に応えて進化を図ることがデリカのDNA

 5代目となる現行型が登場して12年が経つにも関わらず、なおも好調なセールスを維持し続けてきたデリカD:5。デリカからデリカへと乗り替えるオーナーも多く、熱いファンが少なくないモデルである。それゆえ「デリカはこうあるべし」という確固たる価値観を持っているユーザーも少なくないだろう。

 そんなデリカD:5がビッグマイナーチェンジを実施した。そのデザインを見て、大胆な変貌ぶりに驚いただろうし、熱烈なファンのなかには、「これはデリカではない」とさえ感じた人もいるかもしれない。

 そんなわれわれの疑問に対して、デザイン開発の責任者である松延浩昭さんは次のように語ってくれた。

「デリカの50年の歴史を振り返っていただくと、じつはデリカとはすごく変わり続けてきたクルマだということがわかります。はじめはワンボックスの商用車にパジェロの足まわりなどを備えたクルマ。それからパジェロのFR四駆システムにワンボックスのボディを載せ、次はFFにと、世代ごとの変化がとても大きいんです。そのたび、従来のユーザー様から『なんてデリカを作ってくれたんだ』という声が挙がることもありました」

「けれども時間とともに『なるほど、これが新しいデリカなんだな』と支持していただき、その繰り返しが歴史を作ってきたのだと思います。守りに入ることなく、しっかりと時代の変化に応えてデリカを進化させ、そのよさをご理解してもらうこと。それはいわばデリカのDNAのようなものかもしれませんね」

目指したのは、意匠のよさと高い機能性を両立させること

 変わらぬために、変えていく。デザインチームが選んだ道は、デリカの精神とも言うべきものを守りながら、新しい時代にふさわしいデリカを作り上げることだった。目指したのは、オールラウンドミニバンという独自性を守りながら、その幅を広げると同時にプレステージ性を高め、より多くのユーザーから支持されるデザインだ。内外装デザインの取りまとめ役である大石聖二さんにうかがった。

「デザインコンセプトは『TOUGH TO BE GENTLE』。デリカならではのアクティブ感はしっかり残しながら、これまでにないジェントルな強さをプラスするという考えです。加えてフォーマルかつアーバンな方向性を強めた『アーバンギア』という新グレードを設定することで、デザイン面からもデリカD:5というクルマの幅をより広げていこうと考えました」

 エクステリアデザインの狙いは、SUVの力強さ、プロテクト感、プレステージ性などを、機能性を両立させながら高い次元で表現すること。そのための検証が各段階で徹底的に行なわれた。

 エクステリアでまず目をひくのは、縦型のLEDヘッドライトだ。縦型デザインの実現には、いくつもの高いハードルがあった。たとえば構造の問題だ。縦型デザインのライトは、外側部に壁のようなものができるため、空力にも不利になる。

 こうした問題は、デザインチームだけで解決できるものではない。そのため、今回はライト専任のデザイン担当者を中心に、設計やデザインといった部署の垣根をなくして検討・検証を実施。さらには初期段階からサプライヤーとも綿密な連携を取りながら開発が進められた。

 当初は設計サイドから実現を疑問視され、上層部からも「本当にやれるのか」といった声が挙がるほどのチャレンジだったが、開発チームはこれらの難問を地道な試行錯誤の繰り返しによって解決。とはいえ、これほどの高いハードルも、デザインチームにとってはライトを成立させるためのスタート地点のようなもの。こだわりはさらに細部にも貫かれることになる。ライトを担当した土屋 理さんはこう振り返る。

「縦型ヘッドライトは、三菱自動車の新しいデザイン哲学の象徴である『ダイナミックシールド』のひとつの要素として、機能を魅力に変えることを目指して取り組んだデザインです。このライトでは、ポジションなどの信号灯や、前照灯など、それぞれの機能が混ざらないようにくっきりと光ることを心がけました」

「ほかの光よりも弱いポジションライトは周囲からの視認性を向上させるため上部に位置させ、いろいろな角度からきらっと光って見えるなど、意匠的な魅力の実現にも注力しています。また、縦型デザインは低いところにも光が伸びるので、凹凸のある路面や雪道でも状況がわかりやすいといった機能的なメリットもあります。意匠がいいだけでなく、高い機能性を両立させること。それは今回のデザインで力を入れた点であり、三菱自動車のデザインアイデンティティでもあるんです」

1st スケッチ
初期段階で検討された2案。A案は斜めに切れ上がったライトとダイナミックシールドが特徴。B案は水平垂直基調を重視。両案とも安心感や乗員を守る機能に基づき、顔付きを厚くしたデザインに。

アイディアスケッチ
1stスケッチをブラッシュアップ。A案はグリルをSUV的に建築物の構造体をイメージするようデザイン。B案はダイナミックシールドを縦一杯にあしらい、縦に厚い印象を強調する。

2ndスケッチ
1stスケッチでのコンペの結果、B案を基本にA案のグリルとリヤデザインを組み合わせるというアイディアを選択。2ndスケッチからはアーバンギアのデザインも進められていく。


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