【試乗】待望の6速MTだけじゃない! ルノー・メガーヌR.S.カップはシャシーもブレーキも強化された衝撃の走り (2/2ページ)

専用装備のトルセンLSDも走りに大きく貢献!

 ではメガーヌR.S.カップに乗り込みサーキットへコースインしよう。あいにく路面はセミウエットで滑りやすい。ブリヂストン・ポテンザS001を標準装着されているがウェットグリップは厳しそうだ。

 ドライブモードはトラクションコントロールや電子制御が完全にオフにされる「RACE」を選択。ただし絶対にスピンさせないようにと重い責任を課せられた。

 コースインして全開加速を試みると前輪が激しく空転する。それ自体は仕方のないことだが、その際に直進性が保たれていることが素晴らしい。これはフロントサスペンションに採用されているダブルアクシスサスペンション(DASS)の効果だ。つねにタイヤセンターに荷重がかかるゼロスクラブが維持できるのだ。

 1コーナーへターンインしていくと、低μゆえに前輪がスキッドアウトしている。まだ車速が100km/h以下なのでステアリングを切り増し。すると後輪が逆位相に転舵されヨーが立ち上がる。スキッドアウトしながらもヨーが立ち上がるのはほかでは体験できない特殊な運動特性と言えるだろう。

 2〜3コーナーを過ぎるとタイヤが暖まりはじめ、コーナリング車速が高まる。パッドック裏の高速S字コーナーは100km/h前後で抜けるので4コントロールがどちらに切れるか予測できず慎重に抜けた。姿勢が乱れず安定方向姿勢だったことから同相に切れていた(100km/h以上の車速だった)と見込まれる。

 続く中速コーナーはブレーキングターンイン。逆位相操舵を予測してインべタラインを取ると目論みどおりで無理なくインサイドラインをキープできた。

 続くヘアピンでは完全逆位相速度域。一気にヨーレートを立ち上げると4輪ドリフト状態となり、前輪は直進を保てる状態から最大限のトラクションをかける。その瞬間に外輪が空転しスキッドアウト傾向になるが、これこそがトルセンデフの成せる技で、車速を落とすことなくアクセルでパワーコントロールしながらトラクションを稼ぎ出すことができるのだった。

 最終コーナーはアウト側にウエットパッチが残りインサイドはドライ。前輪と後輪が異なるμに乗る難しいコンディション。こういった場面で万能性を求めるなら4輪駆動(AWD)が必要だが、路面が安定するとたちどころにグリップが得られバランスを回復した。

 車体のロールは小さく、スプリングレートはセミウェットのサーキットでは固過ぎた印象だったが、今後各地のサーキットで試してみたくなる仕上がりだった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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