使った経験ゼロの人も多し!  最近軽自動車にまでパドルシフトが採用されるワケ (1/2ページ)

F1マシンから誕生したパドルシフトがいまや軽やミニバンに!

 ステアリングを握ったままシフトチェンジが可能な「パドルシフト」は、もともとモータースポーツで生まれた技術だが、いまや軽自動車にまで採用されるほど普及している。果たして、パドルシフトを積極的に操作することに意味はあるのだろうか。意味があるとすれば、どのように活用するといいのだろう?

 パドルシフトは、まさにモータースポーツの最前線から市販車にフィードバックされたテクノロジー。最初に採用したのはフェラーリのF1マシン(1989年)で、そのインパクトは強烈だった。クラッチ操作が自動のセミATとなったことで素早いシフトチェンジが可能になったことで明らかに戦闘力アップを感じさせた。このことが、よくできたATのほうがMTよりも速いという意見を生み出したといえる。

 当時、市販車には到底搭載されないテクノロジーで、パドルシフトを疑似体験するにはゲームセンターなどでコクピット型のアーケードゲームを楽しむしかなかった。筆者の個人的な体験でいえばSEGAのマシンを楽しんでいたが、現在のパドルシフトは微妙に異なり、パドルを引いてシフトダウン、押してシフトアップという構造になっていたと記憶している。

 その後、ATのスポーツモードとして前後方向にシフトレバーを動かしてマニュアル操作を行なうものが登場する。その発展形として、ステアリングスイッチによりシフトチェンジを行なう機構が登場した(例:日産スカイラインR34型のステアリングシフトスイッチ)。ホンダもNSXに「Fマチック」と呼ばれる小さなレバーを指先で操作するマニュアル機構をATに設定したこともある(1995年)。

 いよいよパドルシフトが登場するのは1997年、F1直系の技術らしくフェラーリF355に追加設定されたのが量産車初採用といえるだろう。

  

 こうしてスポーツカーやスポーツモデルを中心に採用が進んだパドルシフトだが、いまやミニバンや軽自動車に搭載していることも珍しくない。ただし、ミニバンや軽自動車であっても搭載グレードをよく見ていくと、スポーティグレードに限られていることが多い。実用面で有効であれば全面的に採用するはずだが、現実的にはスポーティグレードの差別化アイテムという位置づけのデバイスといえる。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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