オフロードを知っている三菱らしい進化
三菱のウインター試乗会でのメインイベントは新型デリカの試乗であった。そもそもこの試乗会がクローズドコースで行われたのも、デリカが発売前であったということも影響しているのだろう。試乗車にはナンバープレートは付いていない状態であった。
ここでちょっとデリカの歴史について触れておく。もともとデリカはトラックとして生まれたモデルで、それが徐々に乗用1ボックスへと進化していった。デリカは1979年に登場した2代目、1986年に登場した3代目でクロカン4WDの性能が重視され、その方向性が確定。4代目にあたるスペースギアではパジェロ並のクロカン性能が与えられたモデルへと進化。現行モデルとなるD:5は2007年に登場。従来のフレーム式からモノコックへとシャシーを変化、それまでのキャブオーバータイプからFFベースとなった。
しかしデリカはデリカだ。クロスカントリー性能を重視したボディは、対角線スタックを起こすような場面(つまり、前左と後右が凸に乗り上げて、そのほかの車輪が浮いているような状態)でもスライドドアを開閉できるボディを備えるなど、クロカン4WDファンの期待を破らない存在であった。
しかし時代は流れる。2019年にデリカはビッグマイナーチェンジを敢行。クロカン4WDファンに大きな支持を受けているディーゼルモデルを、従来よりもシティよりにコンセプトシフト。スタイリングも大幅に変更された。では、走りはどうなったのか? 雪を被ったオフロードコースでその真価を問う。
まず、マイナーチェンジ前のモデルに乗って、コースを1周。さすがデリカ。かなりの勾配や、凹凸があるのにしっかりと走っていく。走破性という言葉がデリカのためにあるのだろう。アクセル操作について来るトルクも十分で、わざと雪深いところにクルマを止めてからの脱出も難なくこなす。さて、こんな芸当をこなすデリカに対し、シティ方向にシフトした新型はいったいどんな走りを披露してくれるのだろう? この走りを削ったらデリカは腰抜けと呼ばれてしまうはずだ。
さて新型だ。基本レイアウトは変わらないものの、スッキリしたインパネデザインは好印象。従来よりもストローク感が増したように感じるATセレクターをDに入れて発進する。
この発進からわずか1、2秒でエンジンの進化度を確かに感じる。最高出力でいえば2馬力ダウンとなっているディーゼルエンジンだがトルクは20N・mのアップ。とくに発進時などの低速トルクは厚みを増し、力感が向上している印象が強い。アクセルを踏んだときにグッと前に出る際の無駄がないのだ。
ミッションが6速から8速になったことで、変速比はよりワイドでクロスしている。そのワイドになった分も影響しているので、より力感は強い。加速していくと非常にシームレスにギヤがつながっていく。マイチェン前に比べると明らかに変速ショックが減っている。アイスバーンなどの滑りやすい路面では変速ショックで姿勢を乱すこともある。こうしたセッティングの煮詰め方はさすがオフロードを知っている三菱という印象。