初代プリウス発売から22年! 増え続ける電動化車両の廃棄バッテリーの行方とは (2/2ページ)

各社リユースやリサイクルの整備を進めている

 こうして、どんどん電動車両も進化しているわけですが、そうなると初期モデルは商品力がなくなってしまいます。そうなると中古車で流通させても買い手は少なくなり、廃車ということになるわけです。プリウスをはじめとするトヨタ・ハイブリッドカーの国内累計販売は500万台を超えていますから、少なくない台数が廃車になっているはずです。

 ボディをスクラップにするにしても、バッテリーもいっしょに処理されているわけではありません。少々古いですが、2013年の資料によれば、その時点で約3万台分のバッテリーが回収されて全量が再利用されています。

 その使い道はさまざま。まだまだ使えそうなバッテリーはダメになっている一部のセルを入れ替えることで修理交換用バッテリーとしてリユースしています。

 また、太陽光発電などの蓄電システムとしてもリユースしているということです。リユースできない状態のバッテリーについては、レアアースやレアメタルを抽出して、金属素材としてリサイクルしています。廃車になってもバッテリーは無駄になっていないわけです。

 同様の試みは日産も行なっています。その中心となるのが、日産と住友商事の合弁会社であるフォーアールエナジー社が、2018年に福島県浪江町に作った「使用済みEV用バッテリー再製品化専用工場」でしょう。事故や性能低下など様々な理由でリーフから取り外されたバッテリーパックが、浪江町の工場に集められ、そこで性能試験をしたうえで、リユースしているのです。

 リユース用途は大きく3種類。まずは、十分な性能を維持しているセルを選んでEV用の駆動用バッテリー(補修用)として組み直します。そのほか、フォークリフトやゴルフカートなどで使われるもの、定置型バックアップ蓄電池として使われるものもあります。自動車用バッテリーというのは、もともと高性能ですから、EVで使うには力不足でも据え置き型の蓄電用としては問題なく使えるというわけです。

 もちろん、ホンダにしてもハイブリッド用バッテリーのリユースやリサイクル・資源再循環についてプロジェクトを進めていますし、実際にリチウムイオン電池のリサイクルについは2017年より実績を重ねています。さらに電動車両には必ず使われている駆動モーターのリサイクルシステムについても技術を磨いています。

 リユース、リサイクルビジネスというのはなかなか表に出てこないものですが、環境負荷の軽減はすべての自動車メーカーにとって重要なテーマであり、このように電動車両を多く販売してきた各社は、しっかりと対応しているのです。

 日産はリユースした補修用バッテリーパックを新品の半額以下となる30万円で販売するなどしていますが、電動車両の普及に合わせてリユース・リサイクルビジネスも拡大することでしょう。とくに発電量が不安定な再生可能エネルギー(自然エネルギー)による発電が増えていけば、蓄電システムのニーズも高まることが考えられます。ハイブリッドカー先進国である日本は、蓄電システムを安価に構築できるという点において、再生可能エネルギーによる発電との相性が良いといえるのかもしれません。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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