逆の個性を持つトヨタとBMWだからこそ共同開発に意味がある
トヨタ86とスバルBRZという、同一の車体/駆動系によるスポーツカー開発には当初驚いたが、所有者は満足しているのではないだろうか。しかも、ブランドロゴや車名のバッジを見なければ、外観を含め見分けがつかなくても、運転してみれば明らかに違う個性が作り上げられていた。他人に何と言われようと、自分はこれを選んだという密やかに満たされた気持ちを、所有者たちは心の内に持っているのではないだろうか。
そして次は、トヨタ・スープラとBMW・Z4である。今度は、外観も違いがあるようだ。情報が限られたなかでもっとも顕著なのは、スープラがクーペであるのに対し、Z4はこれまで通りルーフを開けオープンで走ることができるところであろう。
外観的な差は、クルマの個性をより固有なものにしていくだろう。どちらもスポーツカーとはいえ、スープラが走りに徹した志向であるのに対し、Z4はブランドメッセージである駆けぬける歓びを満たしつつ、歓びは運転だけにとどまらずクルマで走ることの爽快さも含んでいる。
ある意味で、逆の個性と思えなくもない。トヨタは軽自動車や大衆車からセンチュリーのようなショーファードリブン(運転手付き)のクルマまで幅広い車種を扱うメーカーであり、BMWは走ることの歓びを何より追求してきたメーカーだ。
しかしそれだからこそ、トヨタは走りへの憧れがより強く、BMWは運転だけでないクルマの歓びに幅を広げたい思いがあるのではないか。共同開発により開発の手間や原価を按分しながら、両メーカーは互いの新たな価値の創造へ投資することができたのだと思う。