パリ市内の大気汚染水準は北京に近づいているとのデータも
ディーゼル乗用車の販売が、欧州で低下している。かつて市場の50%前後を占め、70%近くあった地域もあったが、それらが30~40%台へ低下している。
1997年にトヨタがプリウスを発売したとき、欧州自動車メーカーは「エンジンとモーターの両方を搭載するなど一時しのぎの技術」と笑い、ディーゼルエンジンの普及に努めた。
ディーゼルエンジンは、1999年の東京都のディーゼル車NO作戦にみられるように、2000年前後の排ガス状況ではまだ大気汚染をもたらす水準にあり、東京都も含め日本は先見の明があった。
では欧州がなぜ、それまでの小型車中心から上級車種にまでディーゼル乗用車販売に力を注いだかといえば、小型車で実績のある技術を応用するだけで燃費を改善でき、余計な投資をせず儲けられるからだ。また、欧州の各都市は日本ほど人口が密集しておらず、都市自体の規模や数も小さい。そこで、ディーゼル排ガスによる大気汚染を消費者が意識しにくかったともいえる。
だが、関東に過ごす私の目からすれば、当時すでに欧州の都市部は地平線に光化学スモッグが発生しはじめていた。
世界人口が、19世紀末の16億人から75億人に達する今日、欧州の都市人口も増加の一途であり、そこでディーゼル車が数多く走れば一気に大気汚染が進む。たとえばパリ市内の大気汚染水準が、中国・北京と同等であるとのニュースも伝えられてきた。ここにきて、ようやく欧州の人々もディーゼル排ガスの課題に気づいたのである。