3列目席の実用性はマツダCX-8が圧勝
3)マツダCX-8
3列シートSUVでもリーズナブルな価格にして、3列目席の実用性も高いたぐいまれな1台がマツダCX-8。全長4900mm、全幅1840mm、ホイールベース2930mmの巨体で、室内長が2690mmもあるため、身長172cmの乗員基準で3列目席の居住スペースは頭上に80mm、シートスライドによって2列目席ひざ回りに180mmのスペースを持たせても、3列目席ひざ回り空間は120mmが確保される。
さらにここがもっとも重要なのだが、フロアからシート前端までの高さ=ヒール段差が340mmと、セダンの後席並みで、なおかつシートサイズがクッション長約450mm、シート幅約1110mm、背もたれ高約620mmとたっぷりしたサイズで、緊急席とは呼べない欧州車的かけ心地とゆとりの空間が確保されているのだ。
巨大なリヤドアは80度も開き(逆に左右が狭い場所では全開できないが)、2列目席ウォークイン時の足もと乗降幅は190mm~と不足なし。決定的なのは、2列目キャプテンシートの“標準仕様”を選べば、2-3列目席スルー(スルー幅225mm)でも3列目席にアクセス可能。居住性はもちろん、乗降性もばっちりなのである。
加えて、3列目席使用時のラゲッジルームの奥行きは約500mmあり、多人数乗車での宿泊を伴うようなドライブにも対応可能である。
もちろん、走行性能は最新のマツダ車だけあってハイレベル。動力性能、乗り心地、静粛性ともに文句なし。クリーンディーゼルとともに用意されるスカイアクティブ-Gの2.5リッターガソリン車なら約290万円からという驚異的にリーズナブルな価格も大きな魅力となる。
4)レクサスRX
レクサスはミニバンを持っていない。そこで登場させたのが、デザイン、走行性能ともにプレミアム感たっぷりのSUV、レクサスRX450hL(ハイブリッド)の3列シートモデルだ。
しかし、ホイールベースは、2列仕様、3列仕様ともに2790mmと同一。その3列シート化は、リヤオーバーハング部分を110mm延長したことで実現されている。
2列目席ウォークインでの乗降性は決して悪くはないものの、さすがに身長172cmの乗員基準だと、3列目席に着座するとひざ回りスペースはゼロ。頭上方向の余裕から座れないでもないが、1/2列目席と違い、レクサスならではのプレミアムSUVの世界は味わえない。とはいえ、3列目席を格納すればフロアはほぼ完全にフラットになり、車中泊も可能なほどだから、3列目席格納前提で使えば評価は一気に高まるはずだ。
北米仕様には2列目キャプテンシートの用意があり、2-3列目スルーが可能で、3列目席の乗降性、内側の足を投げ出すこともできることから居住性(2列目席のプレミアム感も!)が一気に高まりそうなのだが、日本仕様に設定がないことが惜しまれる。
5)ボルボXC90
すべてを一新した新世代ボルボの第一弾が、PHEVもラインアップする3列シートプレミアムSUVのXC90だ。価格もまた約780万円~1300万円とプレミアムだが、内外装の高級感、とくにスカンジナビアモダンテイスト極まる上質なインテリア、世界最先端の先進安全支援機能はSUVとして最上といえる。ホイールベースは2985mmに達し(CX-8は2930mm)、さすがに3列目席の居住性は、3列席部分の上質感を含め、3列シートSUVとして最上の部類となる。
何しろ3列目席使用時でもラゲッジルームの奥行きは約770mmもあり、たとえばオデッセイの約550mmをリードする余裕がある。
とはいえ、ボディーサイズは全長4950×全幅1930mm。さすがに大柄だ。SUVの3列目席の実用性に期待するなら、このぐらいのサイズ感が必要であり、サイズが許容できるかがポイントだ。
結論としては、ミニバンであれば5ナンバーボックス型でさえ、3列目席にゆったり乗ることができ、全席の乗降性により優れる……その点を踏まえ、3列シートのSUV、その実用性、必要性を検討する余地があるということだ。くり返すが、悪路走破性+多人数乗車の両方をかなえる新型三菱デリカD:5のようなミニバンもこの世には存在するからである。
価格対3列シートSUVの3列目席の実用性という点では、個人的にはマツダCX-8がズバ抜けていると思っている。