フル乗車すると動力性能的に不足が生じるクルマも
世界的なSUVブームのなか、SUVの3列シート車が続々と登場している。日本車ではホンダCR-V、マツダCX-8、レクサスRX450hL、日産エクストレイル、三菱アウトランダー、トヨタ・ランドクルーザーなど。輸入車でもボルボXC90、メルセデスベンツGLSなどが揃う。
しかし、最初に言っておけば、それはミニバンに代わるものではない……ということ。SUVのリヤドアはスイング式で、両側スライドドアミニバンの乗降性にかなうはずもなく、また、SUVは最低地上高を高めているから、ミニバンのような低床も期待できない。
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ここでは3列シートSUVの○と×について解説していくが、まず3列シートSUVの○な部分としては、悪路にも強いSUVにして、いざというときに6~7人が乗車できる点にほぼ尽きる。ただし、悪路に強いミニバン、三菱デリカD:5のような特異なミニバンもある点を忘れてはいけない。
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×な部分としては、先に触れた乗降性で、リヤドアから3列目席に乗り込むのは、フロアの高さやリヤドアの大きさ(長さ)もあって、けっこう大変。また、3列目席の居住性に関しても、純粋なミニバンほどのスペースはない。あくまで緊急席的なスペース、シートでしかないことがほとんどだ。ミニバンにある3列目席頭上のエアコン吹き出し口もないと考えていい(レクサスRXには3列目壁面に、ボルボXC90にはBピラーにも吹き出し口があるが)。
さらに、2列シートが基本の3列シートSUVの場合、フル乗車すると動力性能的に不足する車種もあることも念頭に置いておきたい。
1)ホンダCR-V
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CR-Vにはガソリンターボモデルのみに3列シートモデルが用意されている。日本仕様の発売が遅れたのも、ハイブリッドとこの3列シートモデルを一気にラインアップしたかったからだ。とはいえ、3列目席は2列目席を重い操作で格納しないと乗降は大変。
身長172cmの乗員を基準とした場合、ひざまわり空間は2列目席ひざ回り空間を最大280mmから120mmにスライド機構で狭めたときだと90mmあるものの、フロアに対してシート位置が低めでひざを抱える着座姿勢になり、2列目席のスライドのためのレール4本がフロアを走るため、足もとに広々感はない。
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また、CR-Vの3列シートモデルのラゲッジスペースの奥行きは約290mmしかなく、フル乗車してドライブ旅行に出掛けるのは、荷物の置き場を考えると現実的ではない。
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2列シート限定の2リッターエンジン+モーターのハイブリッドは動力性能的に余裕があるものの、3列シートの1.5リッターガソリンターボはフル乗車すると登坂路や高速追い越しシーンでギリギリの性能となる。CR-Vはハイブリッドモデルが魅力的で、どうしても3列シートが欲しいというなら、走破性は別にして、今や価格的に差のないオデッセイに照準を定めたほうがよいかもしれない。
2)トヨタ・ランドクルーザー
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本格的かつ世界で認められている強靱な悪路走破性を持つSUVにして、4.6リッターV8エンジン搭載で、トヨタの高級車に迫る乗り心地、静粛性を持ち合わせているのが、レクサスLXのベース車でもあるプレミアムSUVのランドクルーザー。
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とはいえ、悪路走破性に特化するため最低地上高、というかフロアは高く、室内も車格ほど広くはない。よって3列目席も緊急席的で、高級SUVにもかかわらず、体育座りが強要される。プレミアムな世界を堪能できるのは、1/2列目席までだ。
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また、3列目席使用時のラゲッジルームの奥行きは約220mmでしかなく、3列目席の格納方法が左右ハネ上げ式のため、格納してもそれほど広い拡大ラゲッジスペースが得られないのも事実。
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