スポーツモデル=独立懸架とは限らない
●マルチリンク
1983年にメルセデス・ベンツがリヤサス用に開発した、ダブルウイッシュボーンの変形ともいえるサスペンション。アクスルを4〜5本の複数のリンクで位置決めするのが特徴。
■メリット
・対地キャンバー変化をなくせる。
・ロールステア(ロール時のトー変化)を抑えられる。
・トレッド変化をなくす。
・ジャッキアップ現象をなくす。
・アンチダイブ・アンチスクワットジオメトリーにできる。
・コンプライアンスの最適化。
・剛性が高い。
■デメリット
・構造が複雑で、コストが高く、重量が重い。
・各部品、取り付けの精度が必要。
・設計度の自由度が高い反面、狙い通りの性能を出すのが難しい。
・省スペース化には向かない。
●セミトレーリングアーム
かつてFR車は、フロント=ストラット、リヤ=セミトレというのが主流だった。BMWが元祖で、サスアームは1本で、アームの回転軸が車体中心線に対し斜めに設定されているのが特徴。
■メリット
・シンプルでコンパクト。後席スペースが広くとれる。
・アンチリフト効果がある
・乗り心地がいい
■デメリット
・ストローク変化=アライメント変化になりやすい。
・トーコントロール機構を追加し、短所を解消する改良も重ねられたが、ダブルウイッシュボーンやマルチリンクにとってかわられた。
ただ、サスペンションは形式論だけで語れるものではなく、乗り心地が良く、接地性変化が少なくて、トラクション、コーナリングフォース、制動力をきっちり伝えられさえすれば、形式にこだわる必要はない。
つい最近も、新型マツダ3(アクセラ)のリヤサスが、マルチリンクからリジットのトーションビーム式へ変更になって話題となったが、単純にマルチリンクが偉くて、トーションビームがしょぼい、コストダウン、レベルダウンと考えるのは早計というもの。
マツダ3のトーションビームは、球面形のブッシュ内部構造の採用や可変直径センタービームなど新技術が投入されていている。
ハンドリングの良さには定評がある、ルノー・メガーヌR.S.のリヤサスだってトーションビームなので、クルマはスペックでは語れない。
VWゴルフも、リヤサスはコンパウンドクランク形態のトーションビーム方式で、しっかりコントロール性のいいハンドリングを実現しているので、サスペンションはスペックではなく、トータルバランスで評価しよう。