将来的には自動運転につながる機能を持つ市販車も存在
2020年までに自動運転車をローンチする、といったフレーズをそこかしこで見かけるようになった。自動運転はすでに夢の技術ではなく、具体性のあるテクノロジーだ。もちろん、そのためには技術的なテーマもあれば、法整備など社会的な課題もある。
一方で、現時点で市販車に搭載されている「自動運転技術」は、あくまでもADAS(先進運転支援システム)に過ぎないという見方もある。たしかに、現段階では赤信号を認識して停止線で止まるといったレベルの自動運転技術は市販車には搭載されていないし、一時停止の交差点で左右を確認して右左折するといった市販車も存在しない。テストコース内ではそうした振る舞いを可能にした自動運転車はあるが……。
さて、そんな発展途上のテクノロジーである「自動運転」だが、市販車に搭載されている技術は確実にレベルアップしているし、将来的には自動運転につながる機能も見受けられる。ここでは、数あるADAS搭載モデルのなかから、「いま買える、もっとも自動運転に近いテクノロジー」を有したクルマをピックアップして紹介しよう。
1)アウディA8
自動運転に欠かせないのは最適な振る舞いを実行するAI(人工知能)と周囲の状況を検知するためのセンシング技術だ。前者については、まだまだ開発中といった段階だが、センシングはずいぶんと完成形に近づいている。既存のADASが用いているカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザー、超音波ソナーといったセンサーを組み合わせる。しかし、多くの自動運転実験車にはレーザースキャナ(LIDAR)と呼ばれる空間センサーが備わっている。
現在市販されているADASの機能であればカメラやミリ波レーダーで十分にカバーできるが、その上のレベルに行くにはLIDARは欠かせない。そして、市販車において唯一LIDARを備えているのはアウディA8だ。まだまだ高価な部品であるLIDARゆえに、アウディのフラッグシップであっても、フロントの中央に1個装着されているのみ。あくまでもADASの精度を上げるために使われているといったところだ。なお、ドライバーの操作が不要なレベルの自動運転実験車では前後左右に6個程度のLIDARが必要とされている。
2)メルセデス・ベンツCクラス
かなり自動運転に近い感覚のADASを実現しているのがメルセデス。その「インテリジェントドライブ」は、最上級モデルだけでなく量販モデルといえるCクラスにも搭載されている。
機能としては、高速道路の一定車線における追従クルーズコントロールと操舵アシスト、そしてウインカー操作だけで後方の安全確認をして車線変更を実施するというものだ。そのために使われているセンシングシステムは、『前方約250m、側方約40m、後方約80mを検知するレーダー、約90mの3D視を含む約500m前方をカバーするステレオカメラ』によって構成されている。
これらセンサー類だけではドライバーが不要になるレベルの自動運転は難しいと考えられるが、自動運転の感覚を味わえるADASとしては最高峰だろう。それがCクラスの価格帯で体感できるというのはさすがだ。