日本においてクルマが実際に使用される年数は10年近い
製造から廃棄までの視点で環境性能を精査することは大切だ。
しかし、見逃されがちなのは、現在のエネルギー事情で換算しても、いま買われた新車が10年乗り続けられた将来、古い性能のクルマが走り続けてしまう恐れも考慮しなければならない。
内閣府の調査を基にしたクルマの使われる年数は、9年を超えている。そして10年後には、世界のエネルギー事情も変わるかもしれない。
東日本大震災以降、日本の発電における電源構成比率は火力が8割近くに達し、これは中国の7割強を上まわる。世界全体の火力比率は65%で、日本の現状は先進国内では異常だ。日本に次ぐ火力依存が高いのはインドくらいである。
そうした火力依存の電力事情から製造から廃棄までの環境負荷を論じても、ほとんど意味をなさない。すでに海水温度が上昇し、異常気象として集中豪雨や、台風の大型化、あるいは豪雪が毎年各地で頻発する状況において、気候変動に影響を及ぼす二酸化炭素(CO2)排出をいかにゼロに近づけるかが喫緊の課題であるからだ。
CO2排出ゼロの発電として再生可能エネルギーに依存するのも、危機管理としてふさわしくない。なぜなら、太陽光にしても風力にしても、従来の気象条件を基に効果が考えられ、今日の異常気象の下では期待した成果が得られない公算が高いからだ。
ことに日本は食料自給率が40%以下と低く、欧米の先進国のように再生可能エネルギー率の高い国々の多くが食料自給率100%前後の農業国であるのに比べ、平地の少ない日本でエネルギーに土地利用することは自殺行為といえる。