カルロス・ゴーン問題で注目されるのは日産ばかり!  三菱とルノーは果たしてどうなる? (2/2ページ)

間違いなく三社のアライアンスを継続したほうがメリットは大きい

 ところで、自動車業界の技術トレンドといえば「CASE(コネクテッド・オートノマス・シェアリング・エレクトリック)」の4要素なのは言うまでもないが、その点においてもルノー・日産・三菱自アライアンスは抜かりない。

 ちょうど一年ほど前の2018年1月には三社によるベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立している。出資比率はルノー40%、日産40%、三菱自動車20%で、CASEに代表されるモビリティへのオープンイノベーションへ優先的に投資するもので、すでに全個体バッテリーを開発する企業へ投資、アライアンスとしての活用を狙っている。

 こうした動きもあり、三社に利害関係は一致していると見るのが妥当だ。強力なリーダーシップを失ったからといって、すぐにバラバラになるとは思えない。むしろ、生き残るためにはアライアンスによる世界トップレベルの規模を維持していくほうが、各社にとっても好都合のはずだ。スケールメリットを失えば、ほかのライバルに蹴落とされる可能性もある。「日産の利益はルノーに吸い上げられている」といった見方もあるが、ここで手を切って日産単独の規模になってしまったときに、いまの価値を守れるとは限らない、むしろ疑問だ。

 スケールメリットでいえば、もっともアライアンスのメリットを享受できるのは三菱自動車となるはずだ。グローバルでも150万台前後の生産台数に過ぎない同社が単独で生き残れるような時代ではない。アライアンスメンバーであることによる購買力、そしてCASEのような規模も重要な先進技術の獲得など、三菱自動車にとってはメリットが大きい。現時点では、アライアンスから独立する意義は感じられない。

 アライアンスの他二社(ルノー・日産)にしても年間150万台規模の仲間がいることは部品や技術の共通化においてコストダウンなどの面で利となるわけで、わざわざ手を切る必要もない。企業ごとのカラーなどマインドの面での軋轢がないわけではないだろうと予想されるが、ソロバンをはじけばそうした感情にプライオリティを置いている場合ではなくなるはずだ。その意味では、自動車業界が大きく変動する、これからしばらくにおいて、このアライアンスが簡単に空中分解状態になるとは考えづらい。

 ただし、年間1000万台を超える規模の自動車メーカーアライアンスが、ソロバン勘定だけでつながっていけるとも思えない。強いリーダーシップが必要となるだろう。アライアンス内の力関係を調整することで新たなリーダーを生み出すのか、それとも実績のあるリーダーをスカウトしてくるのか。現時点では勢いのあるルノー・日産・三菱自アライアンスだが、その未来が明るいかどうかは、どのような人物が次のリーダーになるかにかかっている。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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