ベンツやBMWに比べ控えめなデザインで成功した初代レクサスLS
一方でレクサスLSは日本国内では、海外市場でいうところの初代や2代目、3代目がトヨタ・セルシオとして販売されていたので、少々わかりにくくなるので、ここでは日本でいうところのセルシオとして販売されていたモデルもLSとして見ていくことにする。
80年代後半、日本車が世界的に高い評価を受け、海外でよく売れるようになると、トヨタだけでなく日産やホンダも、ほぼ時を同じくして海外で、より収益性の高い上級ブランドのラインアップを行った。
そのなかでレクサスは、世界的にステイタスを築いていたメルセデス・ベンツやBMWとの差別化もあり、日本的なプレミアムブランドモデルのあり方をまずはLSで具現化したともいわれている。メルセデス・ベンツやBMWに比べれば押し出しを控えたエクステリアデザインや、当時は圧倒的な優位性を持っていた、オプティトロンメーターなど、これでもかという最新エレクトロニクス装備の導入、そして圧倒的な静粛性能の実現であった。このような特徴は、当時のほかのレクサス車でも共通の傾向として見ることができた。
このようなブランド全体の傾向は、先代モデル(日本で初めてLSとしてラインアップされたモデル)の前期モデルまでは見ることができた。当時南カリフォルニアのレクサスディーラー販売関係者が「メルセデス・ベンツやBMWの押しの強さに嫌気を持つひとがレクサスを選ぶ」と話してくれたのをいまも覚えている。
しかし、中国やロシアなど、新興国市場が経済成長とともに新車販売台数を飛躍的に伸ばすようになると、その風向きは大きく変わってくることになる。新興国、とくに富裕層はとにかく押し出しの強いデザインのクルマを好む傾向にある。新車販売市場として現実の販売台数だけでなく、その伸びしろを見れば無視できない状況にもなり、ドイツ系を中心に欧米のとくに高級車はエモーショナルなデザインが強調されるようになった。
レクサスについてもこの流れは十分理解しており、徐々にエモーショナル路線を歩むこととなるが、レクサスも含むトヨタ車全体のクルマ作り全体もここ数年のエモーショナル路線強化により、最近のレクサス車は、ドイツ系プレミアムブランド車と正面対決するようなキャラクターに激変することとなったが、その“変身”により販売実績にもプラスに作用し、ブランドステイタスもアップさせることとなった。