生産から9カ月が過ぎると新車登録に車検費用が発生する
新車販売業界では“在庫”といってもいくつかのパターンが存在するのである。まずは商談などで、「在庫があればもう少し値引きできますよ」というようなレベルで使われる在庫は販売店在庫のことを指している。大原則としては、お客が購入意思を示し作成した注文書にサインして受注となった段階で、ディーラーはメーカーへ当該車種の生産をオーダーすることになる。
しかしこれでは、納車までに結構な時間を要してしまうので、ディーラーがよく売れる人気車種を中心に、売れ筋のグレード、人気のボディカラーで、よく選ばれるオプションを装着した仕様を先行してメーカーに発注し、完成車を自社でストックしておく販売店在庫というものがある。これは家電量販店など異業種でも、店頭在庫としてストックしているのと同じようなものであり、けっして売れ残りではない。
ただ、新車販売では販売店在庫に賞味期限のようなものがある、それが完成検査証明書である。ここ最近はメーカーによる不正問題発覚で話題となることも多かったのが完成検査。有資格者が完成した新車を一定基準でチェックして合格すると完成検査証明書というものが発行される。この証明書は発行後9カ月という有効期限があり、この期限内では、運輸支局への登録申請の際に当該車両を運輸支局へ持ち込み検査ラインを通す必要は原則的にはなく、書面のみで手続きすることが可能となる。
この完成検査証明書の有効期限が切れた在庫車のことを、完切れ車と呼んでいる。完切れ車となると、運輸支局への登録申請の際には当該車両を持ち込み、検査ラインで検査を受け合格をもらうことが必要となる。
この完切れ車はいわゆる長期在庫車となるので、破格の値引きが可能となるだろうと思いがちだが、実際はそういうわけでもない。ストックを目的とした一般的な在庫車の場合は、絶えずストックするために先行オーダーをかけるので、破格の値引きで1台売ったとしても、次の1台で取り返せば(値引き締め気味で受注)いいという考えとなるので、値引きは拡大しやすい。