高齢者に決別!? 若返りを図った新カローラシリーズの戦略は成功なのか (2/2ページ)

将来の高齢者には攻めたデザインのカローラが有効

 また世界市場に目を向けると、カローラユーザーの年齢層は平均しても日本のそれとひと回り世代が若いといっても過言ではないだろう。世界第一位の中国市場では高度経済成長期の日本と同じく、初めてマイカーを購入するといった世帯(つまりユーザー層は若めとなる)が多いとされるし、世界第二位の北米でも現役子育て層ぐらいの女性ユーザーも目立っており、けっしてカローラは“年配層のクルマ”ではないのである。

 カローラはすでに初代がデビューしてから50年以上が経過している。同一車名で半世紀もラインアップし続けるということは、他メーカーでも類を見ないことからも並大抵のことではできないまさに偉業そのもの。ただし新車開発においては、その長い伝統により何かと“足かせ”になることも多いと聞く。そのなかでいつしか気がついたら、“高齢者向けのクルマ”といったようなレッテルを日本国内で貼られるようになってしまった。

カローラ

 世の中では“2025年問題”というものが注目されている。2025年に“団塊世代”と呼ばれる世代すべてが後期高齢者となる75歳に達し、日本の高齢化社会が一気に加速するとされている。また時を同じくして団塊世代の子ども世代である“団塊ジュニア世代”も50歳台に達する。人生100年時代のなか、“後期高齢者”と呼ばれる層であっても、多様な価値観を持ち青春時代を自由に謳歌した団塊世代だけでなく、団塊ジュニア層もいままでの流れでいけば、カローラ・セダンのメインターゲットとなってくる。

 残念ながら、このような世代へいままでの日本国内でのカローラ・セダンの実用一点張りのコンセプトは通用しない。「年寄りなのだから5ナンバーサイズの実用セダンがピッタリ」と言われれば、「何を!」とばかりに、たちまち反論されてしまうだろう。カローラ

 さらにいまどきの若年層は子どものころから、自宅のマイカーがスライドアを持つミニバンだったという世帯がほとんどで、トランクを持つセダンスタイルが珍しく“かっこいい”と思うひとも多いと聞く。過去のカローラをリアルタイムで知っている層には、「これでカローラなの?」と驚かせ、“大衆車”イメージを持たない若年層には“セダン=クール=カローラ”というイメージを持たせるうえでは、次期カローラの持つポテンシャルは非常に高いといえる。

 今までの価値観で見れば、やけに若々しいデザインで3ナンバーサイズの次期カローラに対し、「何を考えているかわからない」と思うひとも多いかもしれない。販売現場で話を聞いても、不安なコメントが目立っている。

 “石橋を叩いて渡る”とさえ言われたトヨタにしては、端から見ればかなり“勝負に出ている”ようにも見える。ただ、次の50年、つまり生誕100年というのは大げさかもしれないが、次期カローラにはトヨタのロングスパンで見据えた、深読みすぎると言われるかもしれないが、さまざまな思惑というものも感じてしまう。カローラ

 今後も日本市場は人口減少と超少子高齢化により新車販売だけでなく、保有台数も減り続けて市場の縮小には歯止めがきかないのは明白。そのなかで軽自動車のような薄利多売の商売はまさに消耗戦そのもの。となれば、少なくなる販売台数のなかで確実に利益がとれる付加価値のあるクルマの販売を続ける必要性が出てくる。

 他メーカーに比べトヨタはクラウンとカローラという二枚看板のもと、堅調にセダンを売り続けている。軽自動車やミニバンなど多くのメーカーで販売を競い合うカテゴリーに比べれば、セダンは値引きも荒れにくい。そのセダンでイニシアチブをとるというのは収益という観点でも非常に魅力的に映るはずだ。次期カローラの登場とその後の販売動向はじつに興味深いものになると考えている。カローラ


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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