素直にいいクルマを作り続けることが信頼回復の近道
「いいクルマなら良く売れるというわけではない」とは、新車販売現場でよくいわれること。新車購入を検討しているひとは単純にクルマの良し悪しだけでなく、購入後のメンテナンスなどの利便性を考えたディーラー店舗の立地、担当セールスマンの人柄など、さまざまな角度から購入車種を絞り込んでいる。
そのなかで、メーカーのスキャンダル、しかもそれが度重なっていれば、「そういえば」と思い浮かべやすい。庶民にとってみれば新車購入は非常に高額な買い物となるので、限りなくネガティブなものを排除したいという気持ちは当たり前といえば当たり前の行動ともいえる。
トヨタC-HR、スバルXV、ホンダ・ヴェゼルなど、同クラスには人気車種も多いので、その意味でもエクリプス クロスが外されやすい環境となっていることもあるようだ。
これは三菱、ましてや日本に限った話ではない。2009年から10年にかけてアメリカにおいてトヨタは複数車種にわたる大規模なリコールを実施した。この時アメリカ在住で現地の新車販売に詳しい知人は、「トヨタ以外のメーカー車に乗っているひとが新車購入を検討するとき、『とりあえずトヨタ車ははずそう』という動きが目立っている」と話してくれた。リコールは問題箇所を改善してくれるということで、アメリカではそれをネガティブに捉えるひとは日本に比べて少ないとのことだったが、それでも「とりあえずはずそう」という動きが目立ったとのこと。
いまカルロス・ゴーン氏の逮捕が世間を賑わせているが、このスキャンダルはメーカーや、ましてクルマそのものへ直接かかる問題ではないので、いまのところ目立って大きな悪影響はないとのことであるが、長期化すれば今後どうなるのかは未知数ともいえよう。
いまビッグマイナーチェンジ予定のデリカD:5の予約受注を行っている。デリカD:5については、すでに多数の既納客がいるし、その前身ともいえるデリカスペースギアのユーザーもまだまだ多いので、デリカ系から新型デリカD:5への代替えがエクリプス クロスの比ではなく期待できる。他銘柄からの代替えについては、ライバルといえるのはカテゴリーが異なるマツダCX-8ぐらいと、“オンリーワン”的なキャラクターでもあるので、期待は持てるものの、楽観視はけっしてできない状況であるのは変わりないといえよう。
エクリプス クロスの市場投入とその反応は、販売台数を見れば苦戦傾向も目立つが、信頼回復の第一歩としては十分意義のあるものだったといえよう。今後もエクリプス クロスのような“素性の良いクルマ”をコンスタントにリリースしていき、そこを突破口にして他銘柄ユーザーも店頭により多く集客し、店頭でしっかりと来店客の心をつかめる接客やサービスができれば、信頼回復もそれほど時間はかからないのではなかろうか? ただ、“良いクルマを出せばそれだけで売れる”という過信だけはくれぐれもしないようにしてほしい。