実刑判決前の容疑者段階で解任したことが憶測を呼ぶ
日産を、文字通り「リバイバルプラン」によってよみがえらせた立役者であるカルロス・ゴーン氏が、有価証券報告書の虚偽記載により逮捕され、カルロス・ゴーン容疑者となった。これにより、一週間と置かずに日産自動車の代表権を解かれ、会長職を解任されるという展開になり、マスコミではゴシップ的な内容も含む報道が繰り広げられている。
さらに日産自動車の大株主であるルノーの筆頭株主であるフランス政府まで巻き込んだ、政治的にも無視できない状況だ。ルノー日産の将来について、フランス・マクロン大統領が日本の安倍首相にアライアンスの維持について意思を表面したという報道さえある。もはや私企業のトップによる不正事項というレベルにとどまらない一大事になっているのだ。
そもそも、現時点では容疑者であって、起訴もされていない段階で会長職の解任というのは、いくら勾留されているからといっても、ことを急いでいる印象もある。それが陰謀説であったり、社内抗争であったりといった想像的な報道につながっている面があるのは否めない。
なにしろルノー・日産・三菱の三社連合は2017年の乗用車販売において世界トップとなっているほど大きな企業体(アライアンス)である。それだけステークホルダーも多いわけで、どのような陰謀がうごめいていてもおかしくなく、いくらでもおもしろおかしく報道できる。
いずれにしても、カルロス・ゴーン氏はルノー・日産・三菱アライアンスにおける権力を失った。オーナー家というわけではなく、いわゆる雇われ経営者であることを考えると、ふたたび、このアライアンスをリードするポジションに就くことはないだろう。そこで現実的には、このアライアンスをどのような体制で運営していくのかというが大きな課題となる。
さっそく11月29日には、三社からアライアンス体制の維持についての共同宣言が出ている。逮捕から10日余りで共同宣言を出さざるを得ないというのは、ある種の求心力を失ってしまったことをカバーするために浮足立っている印象も受ける。ちなみに、共同宣言は非常に短くシンプルなもので、ルノーの出した英語版では“We remain fully committed to the Alliance.”というセンテンスがリリースの最後に書かれていた。キャッチコピー風に訳せば「アライアンスにコミットする」という力強い宣言だが、具体的な中身は明示されていない。
三社それぞれの株保有状況からすると対等な立場でのトロイカ体制的な運営というのも考えづらく、求心力のあるトップ不在の状況で、どのようにアライアンスをまとめていくのだろうか。ゴーン氏やその側近がどのような不正をしたのか、それとも事実無言なのかは司法の手によって明らかになるだろうが、それとは別に世界トップの自動車メーカー・アライアンスの再構築は、すでに後戻りできない段階となっている。果たして、ルノー・日産・三菱アライアンスにおけるリーダーは、どこから生まれてくるのかに注目すべきだろう。