86より100mm短いホイールベースがハンドリングの良さに貢献
最終型から15年以上経った現在でも、世界中に多くのファンを持ち根強い人気があるトヨタスープラ。その5世代目となる新型スープラ(A90)が、いよいよ2019年のデトロイトモータショーでワールドプレミアとなる。先行してプロトタイプに試乗する機会を頂いたので、早速その試乗インプレッションをお伝えしよう。
今回の先行試乗会ではクルマの細かいスペックを伝えることよりも、まずはクルマそのものを味わってほしいというメーカーの思いから実現したものだ。正式なスペックや全貌は1月の発表を楽しみに待って頂きたい。
試乗時に明かされた情報は極めて少なく、大部分がいまだベールに包まれているが、開発陣の高い目標とこだわりのもとに生まれたピュアスポーツカーなのだということはすぐに理解できた。
新型スープラはBMWとの共同開発で進められたのだが、どのようなプラットフォームを作るのかという根底の部分からトヨタとBMWの2社での協議・開発が始められ、大もとの骨格ができあがったところからトヨタとBMWはそれぞれのクルマ作りをスタートさせている。BMWから得たスポーツカーに留まらないあらゆる技術は、今後のトヨタのクルマ作りにとって貴重な経験値となるだろう。
スープラの伝統として歴代モデルから引き継いだもの、それはFRレイアウトと直列6気筒エンジンだ。その上で、新型スープラを究極のハンドリングマシンにするという目標のもと、開発を進めてきたという。そのためにボディ剛性を高めることから着目。ボディ全体を使った剛性の高さではなく、とくにフロアの剛性を高めることに力を入れている。
フロアの剛性を上げることでボディ上部の重さが減り、重心高を下げられたことで高次元でのハンドリングに貢献した。実際に新型スープラは86と比べ2.5倍、カーボンボディを使ったレクサスLFAよりも高い剛性と、86よりもさらに低い重心高を実現している。
外観からすぐにホイールベースの短さが際立つが、86と比べ100mm短いとのこと。さらに前後重量配分も50:50を実現し、すべての速度域での高コントロール性と安定感を確保させた。幅広いトレッドとショートホイールベース、重心高の3つに重点を置き開発することで、開発陣の目指す究極のハンドリング性能を得たのだ。
究極のハンドリングマシンを作るにあたり、通常であれば車両開発のテスト走行はほとんどがテストコースだったが、今回はその9割近くを一般道で作り上げたというところにも驚きだ。
搭載されている3リッター直6ターボエンジンは、トヨタ車の中では異色のエンジン音を奏でる。アクセルを踏み込めばエキゾーストサウンドは高々と鳴り、力強く一気に加速する。そしてアクセルオフやシフトダウン時のパンパンという破裂音が、自然と笑顔を呼び起こすのだ。
トルクは1600rpm付近でピークトルクに達するフラットトルクになっており、スロットル操作にリニアに反応するトルク特性を持たせている。トランスミッションは8速ATを採用しているのだが、ツインクラッチにも遜色ないシームレスでスムースな加速が体感できた。