レーシングカートのように繊細なコントロールが求められる
ペースを上げて行くと車輛の運動性能が徐々に明らかになってくる。ブレーキングのターンインではフロントの回頭性が高い。というより、リヤの踏ん張り感が弱く、車体に素早くヨーレートを引き起こさせている。これは極端なショートホイールベースが成す特性だ。リヤが流れ出すというよりは車体全体がスキッドアウトしている印象で、カウンターステアよりもゼロ・カウンター操舵で進行方向を維持しアクセルコントロールでスキッド量をコントロールする乗り方が求められた。それは多田氏が言う「レーシングカートの乗り味」に極めて近く、コントロールに繊細さが必要だ。
試しにリヤを派手にスライドさせドリフト姿勢に持ち込んでみると、カウンターステアを当てドリフト姿勢をアクセルコントロールするところまではパーフェクト。だがヨーレートが収まりカウンターステアを戻すタイミングになると急激にリヤが不安定になった。これは0〜100%ロックまでを電子制御で自動制御しているLSDが、スライドコントロールまではロック領域、カウンターを戻すタイミングではフリーに戻り安定性を乱していると考えられた。
パワーステアリングのアシストが強すぎて操舵力が軽すぎる点、ブレーキペダルのストロークが大きく、ペダル剛性が頼りない点なども気になった。この辺の挙動は開発テストドライバーも認識していて、発売時までにはより扱い易く仕上げて行くとしている。
私見を言うなら極端なショートホイールベースは、低速時のアジリティは高まるものの高速コーナーでは安定させにくい。そういう意味ではスープラは高速スタビリティよりも低速域の小気味良さを追求したと言える。
今回のテスト試乗では自己計測でラップタイム1分15秒89を計測した。筑波サーキットでは10秒速いタイムになるのが通例だから1分5秒台が叩き出される可能性が高い。
来年日本で登場するであろう新型BMW Z4とトヨタ・スープラ。同じパワートレインとシャシーを共有することになるこの2台がはたしてどのような最終進化を見せるのか。86/BRZの時のように2台揃えてサーキットで比較してみたら面白いだろう。