典型的なFRスポーツのデザインだがドライバーは前方に移動
ふたり乗りのオープンカーなんて、まったく実用性がない単なる遊びグルマだと思っている人が多いと思う。だが、クルマ好きにとってオープン2シーターはある種の憧れのスポーツカーだ。軽快なハンドリングと髪で風を感じる走るは爽快感満載だ。
私も2シーターではないが、911ポルシェ(996型)のオープンカーを所有していたことがある。子どもが小さかったので、狭い後席でもなんとかなったが、子どもの成長とともに911を手放すことになった。だが、オープンカーは実用性がないというのはあまり当てはらないと思った。そんな経験があるので、我が家ではオープンカーの支持率が高く、次男はミニのカブリオレ、妻はスマートのカブリオレに乗っていた。
考えてみれば贅沢なファミリーカーだが、屋根がないので、背が高い荷物はオープンで運べるし、ゴルフバックは屋根を開けて後席から出し入れできた。ちょっと面倒だが、工夫すればオープンカーはファミリーカーになり得ると思った。
さらに大切なことをもうひとつ述べると、屋根はソフトトップに限るということ。ハードトップだと屋根を閉めているときにオープンカーの主張ができないが、雨が降り落ちる雨音はソフトトップならではのもの。
さて、今回リポートするのはBMWの新型Z4ロードスターだ。どんなスポーツカーになったのだろうか。まずはデザインだが、内外装含めてかなり洗練されている。どこから見ても“BMW Z4”なのだが、新しさを醸し出している。微妙な変化が絶妙だと思った。とくにリデザインされたキドニー・グリルはより立体的になり、精悍さを増している。このグリルは新型Z4から採用されたものだが、新型8シリーズ、新型3シリーズにも使われる。
FRスポーツカーにとってパッケージはとても重要だ。どこにエンジンを置き、どこにドライバーを座らせるかによって、カタログでは書けないドライバーだけが感じる世界をクリエイトできる。
先代のZ4ロードスターと同じようにフロントエンジン・リヤ駆動は変わらない。Z4のハイパフォーマンスモデル「M40i」には340馬力/500N・mのストレート6(直列6気筒)を縦に搭載するので、どうしてもロングノーズ、ショートデッキという古典的なFRスポーツカーのフォルムになる。
だが新型はノーズの長さを少し短くし、ドライバーを以前よりも前方に座らせるパッケージとなった。ボディのスリーサイズは全長4324mm/全幅1864mm/全高1304mmとなり、先代と比べて全長は85mm長くなり、幅は74mmワイドになった。だが、ホイールベースは26mm短くなっている。このパッケージではトランクスペースが広くなっているので、日常の使い勝手が向上している。ここは大きなセールスポイントではないだろうか。