渋滞による経済損失はかなりの額に達する!
国土交通省の試算によると、全国で年間に発生する渋滞損失は約38.1億時間、貨幣価値換算すると約12兆円にも達する。別の言い方をすると渋滞損失時間によって、全国で約280万人分の労働力が失われていて、それが物流産業を中心に「日本経済の大きな損失の原因」になっている。しかも、渋滞損失時間の3割が首都圏に集中しているのが現状だ。そうした理屈を抜きにしても、渋滞を好ましく思うドライバーは皆無のはず。
抜本的な解決、解消はインフラの整備が不可欠だろうが、ドライバー一人ひとりの心がけ次第で、解消できる渋滞もかなり多い。そうした運転面からの渋滞対策を考えてみよう。
・渋滞の原因
NEXCOによると、2017年の高速道路の渋滞発生原因の約73%は交通集中によるもので、このうち約61%が上り坂およびサグ部(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)で発生している。
1)上り坂渋滞
これはいわゆる上り坂渋滞でドライバー次第でゼロにできる案件。問題は平地もしくは下り坂を走っていたときと同じアクセル開度のまま上り坂に入っていき、坂道の抵抗で速度低下が生じ、渋滞を引き起こすパターン。
要するに、上り坂に入ってもいままでと同じペースが保てるように、ほんのちょっとアクセルを踏み足せば渋滞が防げるのに、それをやらない人が多いということ……。能天気に運転しているのか、燃費を気にしているのかはわからないが、こんなくだらないことが渋滞の原因の大半を占めている現状は悲しすぎる。上り坂は問答無用でアクセルオンで通過してもらいたい。
また、ゆっくり走りたい人や動力性能が足りないクルマは積極的に登坂車線を利用することも考えてほしい。残念なことに、上り坂であることに気が付いていないドライバーも多くいるので、看板等で上り坂であり速度低下の恐れがあることを注意喚起すると同時に、エスコートライトや路面上に視覚的な工夫を凝らして、無意識的にアクセルを踏み足すような仕掛けも必要だろう。
もっと有効なのは現行車の多くが採用している電子制御スロットルを活用し、アクセルが一定のまま上り坂に差しかかった場合、坂道による負荷を計算し、自動的に速度をキープできるアクセル開度になるようにプログラミングすることではなかろうか。技術的にはさほど難しいとは思えないし、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)と組み合わせれば安全性も確保できると思うのだが……。実用化を検討する価値は十分あると思うのだがどうだろう。
2)トンネル入り口部
暗くて狭いトンネルの入口が近づくと無意識にアクセルをゆるめて速度が低下し、渋滞を引き起こすパターン。これは心理的な問題なので「トンネル入り口では速度を落としてはいけない」ということを周知し、意識化してもらうしかない。一方でトンネルの手前で早めにヘッドライトを点灯し、心の準備をしておくことなども大切。
渋滞発生個所で有名な東名高速の大和トンネル(神奈川県)などは、緩やかな上り坂+トンネルという組み合わせで、全国屈指の渋滞の名所になっている……。
3)インターチェンジの合流部
これはまさに交通集中による渋滞。マナーよく譲り合いの精神で合流するのが大前提だが、気になるのは、合流し終わった後もなかなか速度を回復しないクルマ。安全に合流が済んだら速やかに加速し、巡航速度を取り戻そう。これだけでもだいぶ渋滞が減らせるはずだ。
4)料金所
ETCの普及で、料金所渋滞は高速道路の渋滞個所の1%に収まっている。しかし、依然としてETCゲートをくぐったあとの加速が鈍いクルマが少なくない。後ろのクルマのことを考えてゲート通過後はしっかり加速し、巡航速度に持っていきたい。
5)一般道
一般道で気になるのは、信号など一時停止後の「ふんわりアクセル」。リスタートが悪いクルマが一台いると、交差点での渋滞の原因になる。後続車がいるようなときは周囲の安全を確認したうえで、スーッとスムースなスタートと加速を心がけてほしい。
また右左折をするときは、早めに道路の端にクルマを寄せること。左折時は左端にクルマを寄せ、右折時はセンターライン沿いにできるだけクルマを寄せる。こうすることで、後続の直進車が止まらずに進むことができることがあるのに、道の真ん中で左折待ち・右折待ちをして、後続車を堰き止めているクルマは案外多い……。
同様に右左折時にもう少し交差点内に進入して、右左折できるタイミングを待っていればいいのに、交差点の中央の手前で待機して、後続車の邪魔をしているケースも目立つ。もう少し、ミラーを見て後続車への気配りをすることで、渋滞の原因は取り除けるはず。
止まるべきところで止まり、徐行すべきところは徐行するのは当然として、そうでない部分はメリハリや速度キープの重要性を考えて、踏むべきところではアクセルを踏み足す。これが渋滞解消の鍵になる。