トヨタは2050年までに対2010年比でCO2排出量を90%削減
ヨーロッパでは、フランスやイギリスの政府が2040年からエンジン車の販売を禁止すると、昨2017年に宣言した。国内でも、たとえばトヨタが2050年までに対2010年比でCO2排出量を90%削減すると昨年のモーターショーで宣言し、これがエンジン車の生産終了時期だとしている。
ならば、2030年代の後半くらいまではガソリンエンジン車が存続するのではないかと思うかもしれないが、必ずしもそうとは言い切れない。フランスのPSAは2025年までにすべてのモデルに電動車を揃えるとした。これは、フランス政府が2040年からエンジン車の販売を禁止するとしたことに対する準備と言える。電動車を買うことが当たり前の消費行動となるよう促すためだろう。
将来へのパワーユニットのロードマップなどでは、今後もエンジンは残ると記されている。だが、エンジン車が残るとは言っていない。たとえば、マツダが世界で唯一のロータリーエンジン量産技術を活かし、発電機用エンジンを開発していることが伝えられているが、ロータリーエンジン車を発売するとは言っていないのと同じだ。つまり、今後数十年エンジンが残っても、それはモーター駆動の脇役でしかないということである。
ところで、電動化技術を使っていないエンジン車であっても、近年の燃費向上は素晴らしく、約10年で20%ほど燃費が改善されている。つまりガソリンや軽油といった化石燃料の販売量が20%減っていることを示し、ガソリンスタンドの経営を圧迫している。
ことに日本では、30年に一度スタンドの地下に埋設されている貯蔵タンクの交換が必要で、これに数千万円の費用が掛かるため、燃料の売り上げ増を望めないガソリンスタンドの閉店が相次ぎ、1994年のピーク時に比べ半減している。この傾向は電動車が増えればさらに強まり、ガソリンや軽油を補給しにくい状況が拡大するだろう。
欧米では、まだガソリンスタンドの減少が日本ほど顕著でないようだが、この先電動車が増えていけばガソリンスタンドの経営が成り立たなくなることは目に見えている。だから、ガソリンエンジン車に乗れる期間は想像以上に短いと言えるのではないか。
ガソリンエンジン車をフルスロットルで加速させたときの伸びやかさや、変速によるリズミカルな加速が味わえなくなるのではないかと残念に思うかもしれない。しかし一方で、たとえばBMW i8はプラグインハイブリッド車で、搭載されるエンジンは排気量1.5リッターの3気筒ターボでしかないが、フルスロットルで加速させた際にはV8エンジンを搭載しているのではないかという排気音と、強烈な加速を味わえる。電気や、音響効果を使えば、いとも簡単に演出できるのである。GMのシボレー・コルベットでさえ、ガソリンエンジン車であるにもかかわらず排気の音響効果を使っている。
モーターでもいかに情緒的な走りができるかは、自動車メーカーの腕次第である。たとえガソリンエンジン車が消えても、クルマがつまらなくなるわけではない。