コスト削減のほかスクープの被害も予防できる
単純にクルマのデザインや仕様をわかりやすく伝えるのは変わらなくても、写真の撮り方やページのデザイン、人物の扱いなど、新車のカタログは時代を写す鏡だったりする。
ちなみに人物で言うと、以前であればタレントや歌手、俳優などが出てきていたが、今ではほとんど見かけなくなってしまった。権利やコストの問題がメインなのだが、不祥事リスクもあって、何かあった場合回収もあり得るだけに、最初から使わないほうがいいという判断もあるようだ。
今回注目するのは写真。だいたい2000年あたりが境だが、それ以前はフィルムで撮っていて、それ以降はデジタルへと移行している。
そこを境に増えたのがCG(コンピュータグラフィックス)だ。実際にカタログを見比べてみればわかるが、ロケできちんと撮影していたのが、きれいな夜景のなかにクルマがクッキリと写っていたり、本来止められない場所に置いてあったりするようになっている。走りにしても、どうやって撮ったのかわからないアングルだったりする。これらはCGがなせる技。現在でも合成を使わないこともあるが、実際はほとんどが何かしらの手が加えられていると思っていい。
このような手法がとられるようになった背景には、自由度の高いCGを駆使することで、クルマのもつ世界観を表現しやすいからというのもある。未来の都市の中を走る、先進デザインのクルマ、なんていうのも表現できる。ただ、単純にCGと言っても、背景とクルマを合成するのではなく、路面、建物、空を別々に合わせることもあるほどで、手間をかけていることも多い。
またボディカラーのバリエーションもCGで作られていて、要はひとつのベースをコピペして色だけ変えていくだけ。以前はすべての色を実際に用意して撮影していたし、ラッピングが普及してきたときは、シートを貼り換えて撮影していたが、それがなくなり、作業的な負担を減らすことができている。
同時に、ロケをするコストを削減できるという理由もあるのは事実。実用車のカタログの中には、CGでもレベルが低いものがあったりして、クルマが宙に浮いているように見えることもあるのは、正直お粗末な感じだ。
そしてもうひとつの理由がスクープだ。CGが使えない頃は、発売前のクルマを実際にロケ地に運んで撮影していたことから、その際にスクープ写真を撮られることがままあり、実際に問題になったこともある。CGであれば、クルマそのものはスタジオで撮影すればいいので、スクープ写真を撮られる心配もない。このように様々な理由で、現在はリアルに撮影した写真をそのまま使うことはなく、CGが当たり前の時代になっていると言っていい。