COTYの原点に立ち返れば選ぶ側が決めるべきこと
毎年恒例のイベントになっている『日本カー・オブ・ザ・イヤー』(以下COTYと略)ながら、今年はスズキ・ジムニーとスバル・フォレスターが辞退するという今までにない状況になっている。両車揃って人気車種であり、多方面から「なぜ?」という声も出始めた。両メーカー揃って候補車と関係のない完成検査不正を辞退の理由としているようだ。
まず時系列を追って紹介していきたい。最初に辞退を表明したのはスズキ。COTYの場合、1次選考により今年発売されたクルマから10車種を決める。「今年発売されたノミネート車」は実行委員会によって決められるのだけれど、その時点で「ノミネート車のリストに入れないで欲しい」と連絡あったそうな。10車種に残りたくない、ということ。
スバルはノミネート車のリストに入り、1次選考で10車種に残っている。その後「当社群馬製作所における完成検査に関わる不適切事案により辞退する」と実行委員長宛に連絡があった。実行委員会側で「日本COTYはすべて含めクルマを評価するので辞退はしないで欲しい」と伝えたが、スバル側の意思は堅かったという。
この流れを見て個人的に「日本COTYも新しい時代を迎えなければなりませんね」と痛感した。COTYはメディアが始めた「その年を記念するクルマ選び」である。考えて頂きたい。世界で自国のブランドを複数持っている国となると、日本とアメリカ、欧州の数カ国、中国、韓国しかない。なかでも我が国は主要自国ブランドだけで8メーカーある。
クルマ好きからすればこんな嬉しいことなどない。たとえばオーストラリアの人って、自国ブランドのクルマがないのだから。だからこそアメリカも欧州も、日頃あまり表に出る機会のない技術者の皆さんを讃える機会としてCOTYを立ち上げたのだった。今回の辞退問題、バレー部の不祥事で野球部が出場辞退するのと同じようなもの。
100歩譲って「少しでも問題あれば辞退しよう」というマインドの人はいる。スズキもスバルも最終的に社長が「そうしなさい」と決めたんだと思う。となればいくら「辞退しないで欲しい」と担当者に言ったってムダ。「そこをなんとか」の日本的なお願いなど通用しない状況になってしまう。どうしたらいいだろうか?
COTYの原点に戻ったらいい。もともとCOTYはメディア側で始めたイベント。だからこそノミネート車もCOTYの実行委員会で決める。「日本COTYはすべて含めクルマを評価する」と実行委員会側が言ったのは「もし不祥事がユーザーに危険をもたらす大きな問題であれば、そもそもノミネート車として選びませんよ」ということなのだった。
かくなる上は、自動車メーカーの意思と関係なくCOTYを行えば良い。選んで欲しくないと言っても、実行委員側で「問題ない」と判断したら、普通に選ぶ。素晴らしいクルマであり、10車種に残ったなら、実行委員会が選考委員のため試乗出来る機会を作ればいい。今年で言えば、ジムニーとフォレスターなど何とかなるだろう。
何のかんの言われるCOTYながら、受賞すれば一生懸命クルマを作った人達や、買ったユーザーにとって素直に嬉しい。私ら選考委員もCOTYを受賞したクルマ作った人達の喜ぶ笑顔など見ると、心から「良かった! おめでとうございます」と思う。一生懸命開発したジムニーとフォレスターが候補にも挙げられない、というのは非常に残念です。