走りの満足度が非常に高いモデルも
ハイブリッドは環境には優しいけど、スポーティーさとは無縁では……というイメージが強いかもしれないが、2014年以降、F1だって1.6リッターのハイブリッドターボのパワーユニットで、800馬力以上のハイパワーを絞り出している。
今年のルマン24時間レースを制した「トヨタ・TS050 HYBRID」も、2.4リッターのV6ツインターボ+ハイブリッドモーターを採用している。
モータースポーツの世界でも、ハイブリッドは珍しくなくなってきているため、ハイブリッドのスポーティーカーも増えてくるはずだ。今回はパイオニア的なクルマをいくつか紹介してみよう。
1)ホンダCR-Z
ハイブリッド車でスポーティーな走りとドライビングプレジャーを前面に打ち出した最初の一台。2010年にデビューし、ハイブリッドカーとしては世界初の6速MTを用意(CVTも併売)。かつてのCR-Xを連想させるコンパクトなボディに、1.5リッターi-VTECエンジンとHonda IMAシステムを搭載。ハンドリングはかなりシャープにチューニングされ、スポーティーさは十分。
パワーユニットは当初、2リッターガソリンエンジン並みの加速性能と、モーターならではの低回転域のトルクをウリにしていたが、2012年のマイナーチェンジで、「3リッターのV6エンジン」に匹敵するパンチのある加速力を手にしている。
状況に応じてエンジン音をスピーカー出力するオプション、「アクティブサウンドコントロール」が用意されているのもユニーク。残念ながら2017年1月に販売終了。中古車の平均価格は90万円といったところ。
2)トヨタ・カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”
2018年に登場した、ハッチバック「カローラ スポーツ」。アメリカのCALTYでデザインされたボディはなかなか精悍なスタイルで、プラットフォームはプリウスなどでおなじみのTNGA。
ボディ開口部に環状骨格構造を採用するとともに、車体接合部を点接合だけでなく「構造用接着剤」を追加塗布し面接合とすることで、「スポーツ」の名に恥じない高剛性のボディを実現。
キャビン周りには超高張力鋼板を採用し、ウインドシールドガラスの接着に高剛性ウレタン接着材を使用するなど、最新の技術が盛り込まれている。
世界各国の道を約100万km走ってチューニングを重ね、ワクワクする走りにこだわったというサスペンションは、4本のダンパーの減衰力を個別に調整できる電子制御サスペンション=AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)もオプション設定にしている。
1.8リッター 2ZR-FXE エンジン+モーターのパワーユニットのシステム総合出力は122馬力。スポーティーカーとして通用するだけの、走りの満足度は確実にある。
3)日産ノートe-POWER NISMO S
世界初となるシリーズ方式ハイブリッドシステムを採用した日産ノートe-POWERを、NISMOがチューニングした、ノートe-POWER NISMO S。ベースモデルに対し、最高出力25%、最大トルク26%も性能アップしたパワーユニットを搭載し、起動トルク=最大トルクというモーターの特性を生かし、かなり力強い加速力を見せる。
車重は1250kgで、タイヤからサスペンション、パワーステアリングまでNISMOが独自にチューニング。リヤブレーキもディスクブレーキ化し、ブースター倍率の最適化を図っている。オプションでレカロシートもチョイスでき、動力性能とハンドリングのバランスは、なかなか上々だ。
その他、スバルのインプレッサスポーツハイブリッドもあるが、車重の面で厳しい面があり、「スポーツ」といえるかどうかは……。
一方で、ホンダのNSX(NC)、BMWのi8など、スーパースポーツ級のハイパフォーマンスぶりを発揮するハイブリッドも登場してきている。
ハイブリッドはまだまだ過渡期の技術なので、スポーツカーとして、誰もが受け入れてくれるクルマが出て、それが普及していくまでは、もう少し時間がかかるかもしれないが、車重やフィーリングの面がクリアできれば、伸び代は意外に大きいかもしれない。