クルマ好きがやりがちだが街中ではまったく無意味なドラテク6選

無意味どころか街中ではマイナスでしかないドラテクも

 何事もこだわる人ほど、ひと手間加えたくなる傾向がある。とくにドライビングもベテランや通ほど、そういうこだわりの操作が見受けられるが、時と場合によって、それらは独りよがりだったり、無意味だったりすることもあるので気をつけたいところ。

 今回は、街中で見かけるちょっと疑問符がつくドラテクの例をいくつか挙げてみよう。

1)ヒール&トゥ

 ヒール&トゥはとてもわかりやすく、具体的なスポーツドライビングのテクニックのひとつ。その目的はふたつあり、ひとつはコーナーの立ち上がりに備えて、進入時にギヤをシフトダウンしておくこと。もうひとつは、そのシフトダウンの変速ショックで、車体に荷重変動が起きないようにすること。

 したがって、立ち上がりを考慮する必要がない、赤信号で止まるようなときは、ヒール&トゥはまったく必要ではない……。

 とはいえ、ヒール&トゥをブレーキの踏力を変えずに、なおかつエンジンの回転数をピタリと合わせて決めるのは、一朝一夕でできるものではない。

 サーキットだけ、スポーツ走行時だけで身につくものではないので、信号で停車するときも、練習として行うのはポジティブなこと。

 右左折するわけでもなく、停止するのがわかっているのになぜヒール&トゥ? などと思わずに、スキルアップに熱心なドライバーだと思って、温かく見守ってほしい。

2)ソーイング

 ソーイングとは、ウエット路などで、路面のグリップが低いときに、グリップの限界を探るため(?)に、ハンドルを小刻みに切る操作のこと。

 しかし、タイヤはゴムでできているので、できるだけ変形させないほうが仕事はしやすい。小刻みにハンドルを切るということは、絶えずスリップアングルが変化するということになり、結果として、グリップ力はかえって低下し、クルマは不安定になり、同乗者も不快な思いをするので、はっきり言って百害あって一利なし。

 ハンドルはそのコーナーにおける必要な最大舵角まで切り続け、戻し出したら切り足さずに戻しきるのが理想の切り方。余計な操作はやらないことが、上級者の証だ。

3)フェイント

 交差点などを曲がる際、一旦曲がる方向と反対にハンドルを切って、それから一気に曲がる方向にハンドルを切る動作。一種のフェイントもしくはフェイントモーションのつもりなのだろうが、少なくとも乗用車で舗装路を走るときには不要で無駄な操作。いまのクルマ、いまのタイヤで、フェイントをきっかけにしないと曲がりづらいクルマなどないし、タイヤをこじる分、タイヤライフが短くなるだけ。Gの変化も無駄に大きくなるのでおすすめできない。

4)AT車の手動のシフトダウン

 多段式のATやCVTも普及した昨今、山道などを除けば、通常AT車のシフトチェンジは、ATのコンピュータにまかせっきりの方が効率がいい。

 街中で信号などに止まる際に、マニュアルモードでシフトダウンする必要もないし、高速道路で前走車に追いついたときも、シフトダウンではなく、フットブレーキで減速したほうが、ブレーキランプが点灯して後続車に減速を知らせることができるため安全。

 パドルシフトなどが付いていると使いたくなる気もわかるので、個人の好みの範囲で楽しめばいいだけだが、積極的に支持する理由は見当たらない。

5)信号待ちでNに入れる(AT車)

 ATはシフト操作の煩わしさがないのがメリットなのに、信号待ちや渋滞で止まるたびに、セレクトレバーをDからNに動かしている人を見かける。

 停車時にNに入れても燃費は変わらないし、動かすたびにクラッチが切れたり繋がったりしてストレスがかかるだけ。急発進の原因にもなるので、一時的な停車時は、Dレンジのままがベスト。

6)内がけハンドル

 意外にベテランドライバーに多い内がけハンドル。ハンドルを力強く、一気に大きく切るには適しているかもしれないが、パワーステアリングのクルマなら、そもそもハンドルを切るのに大きな力は必要ない。また、一気に切りやすいということは、途中で止めたり微調整がしづらいということでもあり、大雑把なハンドル操作になりやすい。

 ドライビングポジションの面でも、肩や背中が背もたれから離れやすくなり、浅く腰掛けるきっかけになるので、益よりも弊の方が多いだろう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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