取引価格と為替の変動が小売価格にダイレクト影響する珍しい製品
自動車などの工業製品は、ある程度の定価(メーカー希望小売価格)が決まっているが、ガソリン価格は常に変動している印象がある。実際レシートなどで確認すると、ガソリンスタンドで給油するたびにリッターあたりの価格が異なっていることも珍しくない。常に価格が変動しているという点では、野菜や魚介などのような生鮮食品に近いイメージで価格が変わっている。
その理由として挙げられる大きな要素は2つ。原油価格と為替レートの変動にある。夏休みなど需要が増す時期に小売価格が上がることもあるが、原油価格と為替の動きに比べると影響は小さい。実際、2018年の9月から10月にかけてガソリンの小売価格が急上昇した印象があるのは、原油価格の上昇と円安トレンドが重なったためだ。原油価格でしか耳にしないであろう「バレル」という単位が約160リットルという知識がなくとも、単純に先物市場での取引価格と為替レートをかけていけば、その時点での日本に入れたときの原油の価値が想像しやすい。
具体的に2018年4月時点でのドル円の為替レートは105円以下で、原油価格(世界の指標と言われているWTI先物)はバレル63ドル以下だった。一方、2018年10月の為替レートは1ドル112円となり、WTIの取引価格は75ドルを超えた。単純な計算で、4月は1バレルが約6600円、10月は同8400円となる。つまり3割近くガソリンの価値が上がったことになる。そうした価値の変化が、他の製品に比べてリニアに小売価格に反映されているため、ガソリンの価格は常に変動しているように感じるのだ。
幸い、10月後半からWTI原油先物はバレル67ドル前後に下がってきているため、ガソリンの小売価格も落ちついてきた。しかし、ガソリン価格の上昇によりクルマの使用を控えるなど冷え込んだ消費マインドはそう簡単には戻らないだろう。そうなると、ガソリンの販売量が落ち込み、ただでさえ厳しいと言われているガソリンスタンドの経営を直撃する。すでにガソリンスタンドが一定エリア内で3カ所以下になった「給油所過疎地」が問題となっていることはご存知の通りだ。今回のガソリン価格の急上昇が、そうした流れを加速させていなければよいのだが……。