ベスト・オブXVと思える完成度にオドロキ!
スバルXVはインプレッサをベースに、クロスオーバーSUVテイストに仕立てられたエクステリアだけでなく、余裕の最低地上高200mm、およびフォレスターでも定評あるエンジン、ミッション、AWD、VDCを統合制御して抜群の悪路脱出走破性を可能にするX-MODEを備えたクロスオーバーSUVだ。見た目のスタイリッシュさに対して、中身はけっこう本格的なシンメトリカルAWD=四輪駆動専用車なのである。
そんなスバルXVが改良を受け、新たにマイルドHVと言えるe-BOXER搭載のAdvanceグレードを追加。同時に専用のラグーンブルー・パールのボディカラーや特別感あるブルー内装も用意。さらにXV全体としては一部グレードを除き、後退時自動ブレーキシステムを標準装備。アイサイトセイフティプラスにはサイドビューモニター機能を追加するなどの進化を遂げている。
もっとも、前型のXVハイブリッドとモーター出力は13.6馬力、6.8kg-mと変わらない。が、2L水平対向4気筒DOHCエンジンは150馬力、20.0kg-mから145馬力、19.2kg-mにスペックダウンされ、JC08モード燃費は20・4km/Lから19・2km/Lになっている。このあたりはスバルのスペックにとらわれない、走りへのこだわり、と解釈していいだろう。
分厚いクッション感と背中のサポート感に満足できる運転席に着座し、走り出せば水平対向エンジン+モーターアシストによる、ただスムースなだけでなく、日本車として類まれな濃厚、上質極まるエンジンフィールに感動させられる。そもそもインプレッサ、XVの2Lモデルは日本車離れした、ドイツのコンパクトカーを思わせる走りの良さが身の上だが、e-BOXERはさらにその上を行く動的質感の高さを、全域で味わせてくれるのだ。
動力性能的には2Lの排気量以上の豊潤なトルク感があり、SI-DRIVEの「I(インテリジェントモード)」では、フォレスターほどではないにしてもおっとりとした加速力を示すものの、ステアリングスイッチを「S(スポーツモード)」にセットした瞬間、エンジン回転を低く抑えた、レスポンスにも優れた十二分な加速力を発揮してくれる。
前型もそうだが、カーブ、山道での走りやすさ、安心感、安定感も超ハイレベル。本格SUVに匹敵する最低地上高200mmのクルマとは思えないジワリとした、しなやかなロール感、路面にピタリと張り付くようなフットワークテイストが美点だが、それはもちろん、水平対向エンジンがもたらす低重心化の恩恵である。そして乗り心地も文句なしである。XVのキャラクターから、マイルドHVのAdvanceグレードでも標準の17インチではなく、XV 2.0i-Sと同じ18インチタイヤを装着。しかし、路面を問わずマイルドで上質な、ウルトラスムースなタッチを示してくれるからゴキゲンだ。これはXV 2.0i-Sに対して110kg重い車重も功を奏しているはずだ。
しかもガソリン車に対して、ラゲッジルーム床下に重量物のリチウムイオンバッテリーを積むため、前後重量配分が後寄りになり、それに合わせた専用サスペンションの相乗効果もあって、前後バランス、リヤタイヤの踏ん張りは一枚上手。フォレスターのe-BOXERを搭載するAdvanceグレードに対して車重が軽く、バッテリーが十分に貯まっていれば、出足から30〜40km/hまでのEV走行の領域、頻度が高まっているのも見逃せないポイントだろう。こう言ってはなんだが、これまでスバルのマイルドHVはHV感が極めて薄かった(!?)が、やっと“感覚的に”HVっぽく走ってくれるようになったのが、このXVのAdvanceグレードと言えるかもしれない。
また、Advanceグレードには例によって、ECOクルーズという、通常のACCとは別の全車速追従型クルーズコントロールを備えているのも特徴だ。これはアイサイトのACCがONの走行状態でセットすると、エコ運転効果の高いモーターのアシストと回生ブレーキを最大限に活用する制御モードに入り、加減速時や一定速走行時に積極的にEV走行をするように制御。当然、追従性能は穏やかになり、エアコンもエコ制御されるものの、燃費性能をグーンと高めてくれる機能である。
この季節なので、ECOクルーズによるエアコンのエコ制御についてはあまり実感できなかったが、ACCの追従性能低下もまた、それほど気にならなかった。微力ながらも、モーターアシストが追従時の立ち上がり加速をフォローしてくれていると想像できる。ちなみに、XV Advanceのエコクルーズと変わらない穏やかな追従性能を持つ国産車のACCはいくらでもあるのだ。
加えてXモードの走破性は、サマータイヤでもハイレベル。以前、冬の軽井沢で雪と泥にまみれた極悪路を走行した経験があるが、基本的なAWD性能にも驚かされたものだ。というのは、XモードをONにすべき、右片輪雪、左片輪泥の極悪路で、うっかりXモードをONにせず走行してしまったのだが、それでもグイグイ前に進めたのだからびっくりだった。
これからの季節、雪道の走行も安心・安全なのが、スバルのアイサイト&AWD+Xモードの組み合わせ。上質極まる乗り味、シートの掛け心地の良さから、そのシチュエーションがたとえ遠路でも、肉体的、精神的ストレス最小限でたどり着けるはずである。同乗者も、6.3インチのマルチファンクションディスプレーでさまざまなシステム制御画面を見られるから、ドライブに飽きることがないだろう。
最後に実燃費性能。JC08モード19.2km/Lに対して、季節柄エアコンOFF、首都高中心のECOクルーズONの走行で15.7km/L。都内の渋滞する一般道のみの走行で13.5km/Lだった。スバルのクルマ(エンジニア)は「走りを犠牲にしてまで燃費を追求することは決してしない」と公言しているが、2LのAWD車としては悪くないと思える。もしその数値に少々不満があったとしても(!?)、XV Advanceの日本車離れした上質で低重心感覚極まる走り、濃厚・豊潤な高級感溢れる乗り味を知れば、間違いなく許せるはずである。
ちなみに、個人的にはこのスバルXV Advanceが、現時点でのベスト・オブ・スバルである。