【試乗】中国車なのに高い完成度! 日本未発売のセダン「LINK & CO 03」に乗った! (3/3ページ)

メカニズムコンポーネントは100%ボルボと共用

 試乗後にようやくインタビューができた。登場したのはアラン・フィッセル副社長とデザイナーのアンドレアス・ニルソン氏だった。そこに中国人役員の姿はない。

 アラン氏は欧州フォードの出身で独GMでも副社長を務めたのち、長くボルボで役員として活動してきた略歴を持つ。

 彼の説明でLINK & COは中国吉利とボルボ社の共同出資により起こされた会社で、ヘッドオフィスも開発拠点もスウェーデンにあるという。そこで働く2500名のエンジニアは約50%がボルボの出身者であり、中国人エンジニアはひとりしかいない、という。生産は中国・吉利の工場で行われるが、企画開発は100%スウェーデンで独自に行われたと強調していた。

 今回の「03」に関しても、シャシーやエンジンのメカニズムコンポーネントは100%ボルボと共用しており、最新のXC40で採用され評価の高いCMAプラットフォームを使用しているという。どうりで完成度が高いわけだ。

 一方アラン氏もボルボでXC60やXC90のデザインを担当してきたキャリアを持ち、現在は吉利の副社長兼デザイナーとして活動。LINK&COブランド全モデルのデザインを統括しているそうだ。「03」のメカニズムは、100%ボルボでもインテリアや外装デザインは100%オリジナルだと解く。

 ワールドプレミアイベントのクライマックスは、日没後から始まった。

 富士スピードウェイ・グランドスタンド裏のイベントブースに大規模な特設ステージが設置され、レーザー光による派手なライトアップと超特大モニターによる演出が行われている。暗闇の上空をヘリコプターがすれすれに通過すると、モニターに上空からの映像が映し出され、真っ暗のレーシングコースを4台の「03」が疾走している映像を移す。しばらくすると特設ステージにその4台が登場するという演出だった。この模様は中国全土にライブ配信され、数百万人が観ているという。

 このステージでは吉利のAN Conghui社長をはじめ4人の中国人役員が登壇し、「03」の登場を華々しくアピールした。

 そして最期の驚きに発表が行われる。それは「03」をベースにしたレースカーを制作し、2018年のWTCR(世界ツーリングカー選手権)に参戦すると宣言したのだ。しかも車両制作およびチーム運営は、2017年までポールスターレーシングとしてボルボ車を走らせていたCYANレーシング。ドライバーはポールスターで2017年のワールドタイトルを獲得した世界チャンピオン、テッド・ビョークを擁しての参戦だ。これは初戦からコンペティティブでチャンピオンシップ獲得の有力候補となるのは確実だろう。

 LINK&COはモータースポーツでの活躍がブランド構築とイメージ確立をもっとも重要と考えており、そのための投資をいとわないという。日本のどこかのメーカーにも聞かせたいアナウンスだったが、はたして目論み通りに機能するのか、来年以降のLINK&COの活動を注視していきたい。このステージでようやく「03」の車両スペックと価格が公表された。

 パワートレインはDrive-Eと呼ばれる1.5リッターTD直4直噴ターボで最高出力は180馬力。最大トルク265N・m。トランスミッションは7速DCTを装備。CMA(コンパクトモジュラーアーキテクチャ)のシャシーで、フロントはマクファーソン・ストラット、リヤはマルチリンクの4輪独立サスペンションを持つFF(前輪駆動)モデルだ。前後のトレッドは1597mmというクラス最大値。0-100km/h加速タイムは7.9秒であり、100km/hからの制動距離は35.5mと公表された。実車スケール風洞によりCd値(空気抵抗係数)は0.27、CL(揚力係数)はマイナス0.25とゼロリフトを実現している。

 価格レンジは11.68万元(約190万円)〜15.18万元(約250万円)と発表され、その低価格設定に会場に集まった中国人ジャーナリスト達からどよめきが起こった。

 この「03」をはじめ01、02と3モデル揃ったLINK&CO車。まずは中国で発売し、その後欧州と北米でも発売していく。だが日本での発売は今のところ予定をしていないという。それでは何故日本の富士スピードウェイでワールドプレミアを行ったのか。それはLINK&COのブランドネームに現れるクールさが今の日本のクールさと一致したからだ、という。無国籍なイメージを創出し中国製品が持つ一部のネガティブなイメージを払拭する狙いもあったのだろう。総額3億円を超えるという大規模な「03」デビューイベントはこうして幕を閉じた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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