先代カムリの700台に対し2400台という月販目標
2017年7月10日にデビューした現行カムリ。先代に比べると街なかで見かける機会も俄然多くなっているので、よく売れているように見える。そこで販売台数を調べてみた。
自販連(日本自動車販売協会連合会)統計によると、2017年7月から12月まで、つまり現行モデルデビューから半年間の累計販売台数は1万7861台となり、月販平均は約2976台となっている。そして2018年1月から6月までの半年間の累計販売台数は1万2057台となり、月販平均台数は約2009台となっている。そして2017年7月から2018年6月までの1年間の累計販売台数は2万9918台となり、月販平均は約2493台となった。
トヨタの発信したニュースリリースによると、現行カムリの月販目標台数は2400台なので、2017年7月から同年12月までの月販平均は目標に対して約500台の上乗せとなったものの、2018年1月から6月までの月販平均台数は目標を約400台下回ることとなり、2017年7月から2018年6月までの年間累計販売台数での月販平均2493台はほぼ月販目標台数クリア程度となっているので、統計数字を調べてみると確かに月販平均で2000台以上を販売していれば、いまどきの日本市場ならばヒット車と呼んでも過言ではないが、メーカーの目標販売台数と比較すると特別よく売れているというわけでもなさそうである。
ちなみに先代モデルがマイナーチェンを2014年9月10日に実施したが、これに関するニュースリリースに記された月販平均台数は700台であった。当時カムリはカローラ店の専売モデルであったが、現行カムリになってからはトヨペット店とネッツ店で新たに取り扱われている。現行カムリの月販目標は2400台なので、これを3で割ると800台となる。先代モデルの月販目標台数を3倍にして少し上乗せにしたともいえる台数が、現行モデルの月販目標台数ともいえるので、扱い店が増えた分だけ余計に売れているだけと表現することもできるのである。
トヨタは過去にもプリウスを、初代はトヨタ店の専売、2代目ではトヨタ店とトヨペット店へ扱いを広げ、3代目でトヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツの全チャンネル扱いにして爆発的な大ヒットとなった。シエンタでも先代の最終時期にはカローラ店の専売であったのに対し、現行モデルではトヨタ系全チャンネル扱いにし、これも大ヒットモデルとなっている。
つまりここのところトヨタでは、扱い店を全チャンネルなどに拡大することで、販売拠点が増した分だけ販売台数を飛躍的に増やし、結果的にヒットモデルになっているケースが目立っている。現行カムリもこのパターンがまさにぴったりとあてはまるのである。
ちなみにアメリカではカムリが乗用車販売台数でトップ争いを展開するほどよく売れている。2018年9月の単月では2万7640台を販売、2018年1月から9月までの累計販売台数は26万2887台となっている。日本ではハイブリッドのみとなっているが、アメリカではガソリンエンジン車もラインアップしているので、そもそも日本市場と単純比較はできないものの、それでもアメリカでの“売れっぷり”はたいしたものである。
ただ新車販売に詳しい事情通によると、「カムリは、事情はさておき、レンタカーや、タクシーなどへのフリート販売が結構目立っています。単純なリテール(小売り)販売だけで見ればホンダ・アコードが乗用車販売トップになるともいわれています」とのこと。
アメリカ市場では新車販売全体のなかでSUVを含む小型トラックが占める割合が7割近くとなり、乗用車は深刻な販売不振となっているので、意図的に大規模なフリート販売を行わないホンダを除けば、カムリも含むトヨタだけでなく、日産や韓国系、欧米系なども積極的にフリート販売を行っているので、カムリだけの特別な事情ではないのだが、アメリカ市場については“カムリが販売トップ”と手放しで喜べるとはいえない状況にもなっているのである。
日本国内では現行カムリがよく売れているのは確かだが、他メーカー車に乗っていたお客をトヨタにより多く引き込んでいるという売れ方がメインともなっていないようなのである。
もちろん歴代カムリを乗っていたり、ほかのトヨタ車からの代替えもあるのだが、3代目プリウスが空前の大ヒットとなったのは前述したとおり。そして各トヨタディーラーはいずれも多くの3代目プリウスユーザーを抱えているのだが、4代目がかなり個性的なスタイリングの採用や、際立ったメカニズムの刷新が行われなかったこともあり、3代目から4代目への代替えに苦戦しているのである。
カムリがよく売れている背景には、3代目プリウスの代替え対象となっているという部分のほうが理由としては大きいといってもいいだろう。C-HRやカローラスポーツも堅調に売れているが、これらも4代目プリウスに代わって、3代目プリウスオーナーの代替え対象として機能していることが影響していることは否定できないだろう。
すでに3代目プリウスユーザーの多くは、トヨタ以外の日系メーカー車や、ドイツ系をメインとした輸入車への代替えが進んでいる。カムリの販売好調は現有3代目プリウスユーザーをトヨタ内に残すための防波堤として奮闘している証拠ともいえるのである。