ドイツ車らしい力強さをもつがもう少し個性が際立ってほしい
ディーゼル排気ガス不正問題が起きるまで日本の圧倒的な輸入車販売台数No.1だったVWながら、 いまだに低空飛行中。2013年度は7万2000台売れたのに、2017年度の台数を見ると4万8000台に留まる。この間、メルセデスなど1万台近く販売台数を伸ばしているのだから厳しい。
この状況を打開しようということなんだと思う。輸入車の売れ筋パワーユニットになっているディーゼルエンジン搭載モデルを続々と日本へ持ってきている。なかでも今回紹介する『ティグアン』は人気のCセグメントSUVに属し、ボルボXC40や、BMWのX1のライバルという売れ筋クラス。
ここまで読んで「ティグアンってどんなクルマ?」と思う人も多いんじゃなかろうか。VWは日本に於ける知名度が高かったこともあり、いわゆる殿様商売。積極的に車種のアピールをしてこなかった。結果『ゴルフ』や『ポロ』、せいぜい『パサート』くらいしか知られていない。
とくに”テ行”から始まる『ティグアン』や『トゥーラン』、昔販売していた『トゥアレグ』となると、これといった特徴もないためVW好きを除き、知名度ゼロに近い。加えて多くのユーザーが購入時に重視する自動ブレーキに代表される安全性能もまったく判らない状況。ボルボと好対照 です。
ということでティグアンだ。簡単に紹介すると、ゴルフ級のSUVで、前述の通りボルボXC40や、日本車だとトヨタC-HR、ヨーロッパなら日産デュアリスなどと競合するモデルになる。これまでも150馬力の1400ccターボのガソリンエンジン車を360万円スタートで販売していた。
今回追加されたのは150馬力の2000cc4気筒ターボディーゼルエンジン搭載モデル。DセグメントのSUVになると2000ccで190馬力級のエンジンながら、X1を含めCセグメントはパワーよりコストを重視した150馬力級になる。排気ガス処理は尿素補給が必要な反面、信頼性高い尿素SCR式だ。
乗るとどうか? VWのディーゼル全般に言えることながら、アイドリングと低回転域は意外に賑やか。ディーゼルらしい「ド~」という音を感じる(好み分かれる音質のため一概に悪いと言えない)。絶対的なパワーは平均レベル。最近甘い評価をする同業者は「トルクある」と書くかも。
少しばかり気になったのがツインクラッチ式のAT。流れの良い道で素直に加速&減速するときは滑らかで超気持ちよいのだけれど、市街地に多い「走り出しや直後に少し減速し、そこから中途半端に加速」みたいな乗り方だと、シフトアップしていいのかシフトダウンなのか迷うらしく、違和感あります。
個人的には東京都内で乗る機会多いため厳しいと思う。北海道のような欧州的な道路環境なら良い部分だけ引き出せる。乗り心地だけれど試乗車は20インチという超を三つつけたいくらい大径のタイヤを履いていたためだろう。VWと思えないくらいゴツゴツしていた。17インチなら印象良い? 全般的に「意外に普通ですね」という乗り味。ゴルフのハンドル握ると「ファミリカーながらさすがドイツ車だね!」的なガッチリしていて緻密な雰囲気を持つけれど、ティグアンはBMW X1やボルボXC40などと比べ、個性薄い。それでいて必要な装備付いた上級グレードだと494万円だ。
また、撮影時にしばらくアイドリングさせていたら、甘酸っぱいニオイ(シリンダー内壁温度下がった時に発生するアルデヒド系の臭気。規制対象物質では無い)がしてきた。クリーンディーゼル=無臭だと思っていると、少し期待を裏切るかもしれない。皆さん指摘しないだろうから書いておく。
以上、あまり評価高くないと感じるかもしれないが、ティグアンのメインユーザーはVWのファン層だと考える。ファンからすれば十分VWらしさを感じさせるし、ほかのVW車と比べた時の弱点だって無し。待ちに待った手頃なサイズのディーゼルSUVということもあり、迷うことなく買いだと思う。