クルマとしてのトータルバランスで引けをとらない
昨今のように、ダウンサイジングターボが幅を利かすひと昔前のターボといえば、エンジンパワーを稼ぐためのシステムだった。そしてパワー=ターボの時代のターボ車は、多くの場合、その車種の最上級車種がターボモデルで、同じ車名でも中間モデルや下位モデルがNA(自然吸気)エンジンというパターンだった。
トップモデルと、それ以下のモデルではメーカー側の力の入れ方が違うので、1990年代のパワー系ターボ全盛期に、ターボよりNAモデルのほうがよかったと言い切れるクルマは少ないが、クルマとしてのトータルバランス、マッチングでは、ターボモデルに引けを取らないモデルがいくつかあった。
その代表的な車種を、3台ピックアップしてみよう。
1)スバル・レガシィツーリングワゴン ブライトン220
日本にステーションワゴンブームを巻き起こし、定着させたクルマといえば、スバルの初代レガシィツーリングワゴン。レガシィツーリングワゴンの強みは、ワゴンのカーゴルームの広さ+4WD+力強いターボエンジンという万能さ。そんな初代レガシィには、マイナーチェンジで、それまで輸出用だった2.2リッターSOHC(EJ22型)を搭載した「Brighton(ブライトン)220」が加わる(レガシィ初の3ナンバー)。SOHCのNAなので、パワーは135馬力と控えめだったが、プラス200㏄の余裕もあり、実用性は十分あって好感が持てた。
2)トヨタ・スープラ(80型)
ロングノーズのトラディショナルなFRで、車重の重さも手伝って、ターボエンジンの直線番長というイメージが強い80スープラだが、じつはNAエンジンを積んだSZも、ターンインから立ち上がりのトラクションまでバランスがとれていて、じつは意外にいいクルマだった。もう少し車体が軽ければ、もっとスポーツカーとしての満足度が高かったのだが、ストレート6のNAは、エキゾーストノートもなかなかよかった。
3)トヨタMR2(SW20)
MR2もターボ車というイメージがあるだろうが、正直NAモデルの方がバランス的には優れていた。ターンインはミッドシップらしく軽快で、ブレーキングも安定していた。問題は立ち上がりで、ターボ車ではどうしてもリヤタイヤのキャパシティに問題があり、いいクルマとは言えなかったが、NAモデルはパワーとグリップのバランスがとれていて、スポーツカーらしい走りが楽しめた。
最近では、ターボ色の強かったフォレスターが、フルモデルチェンジでNAエンジンオンリーとなり、話題となったが、ターボにはターボ、NAにはNAの良さがそれぞれあって、ターボだからエライ、馬力があるほうが上、という短絡的な考えではなく、クルマのバランスやキャラクターを考えて、本質的な走りの良さに目を向けてもいいのではなかろうか。