日本でもっとも長い歴史をもつのはトヨタ・ランドクルーザー
日本の自動車産業が軌道に乗り、世界に認められるのは第二次世界大戦が終わって10年ほど経ったときからである。日産といすゞ自動車、そして日野自動車は、ヨーロッパの自動車メーカーと提携し、ノックダウン(現地生産)を行うことで自動車先進国の技術を吸収した。これに対しトヨタは独自開発にこだわっている。この時期に送り出したクルマには思い入れが強いらしく、トヨタは現在も名前を使い続けている。
日本でもっとも長い歴史を誇るクルマがトヨタ・ランドクルーザーだ。ひとつの車名で現在まで継続生産されている日本製のクルマのなかではもっとも長い歴史をもっている。トヨタ・ジープBJ型の流れを汲むクロスカントリー4WDとしてランドクルーザーを名乗るのは、1954年、昭和では29年の6月だ。名門ランドローバーに対抗姿勢を見せ、ローバー(海賊)を駆逐するクロカン4WDの願いを込め、命名した。
これに続くのがトヨタ・クラウンだ。乗用車ではもっとも歴史が長く、1955年1月に誕生している。日本で初めての本格的な高級セダンで、積極的に新しいメカニズムを導入した。トヨタ初のプレス技術を用い、フロントサスペンションは日本の量産車として初となるダブルウイッシュボーンの独立懸架だ。クラウンは、2018年6月に登場したS220系で15代目になっている。
もう1台、トヨタ・トヨエースと呼ぶ小型トラックも長寿だ。誕生したのは、クラウン誕生の1年半後の1956年7月、公募によってトヨエースを名乗ることになった。ライバルのいすゞエルフより3年早く登場している。ランドクルーザー、クラウン、トヨエースは今につながるトヨタの礎を築いたクルマだ。愛着を持つユーザーやエンジニアも多い。そこで名前を切らず、現在まで代を重ねて売り続けているのだろう。
トヨタカローラは1966年10月のデビューだが、兄貴分のコロナや弟分のパブリカが消滅した後も生産が続けられている。現在まで生き延びているのは、愛着を持つ人が多いからである。また、フォルクスワーゲン・ゴルフとともにベストセラーカーの座を競い合っているから、歴史を途絶えさせるわけにはいかないのだ。ライバルだった日産のサニーやマツダのファミリアは消えてしまったが、カローラはしぶとく生き残り、モデルチェンジを重ねている。
日産ではプリンス自動車のスカイラインがもっとも長い
日産はゴーン体制になったときに古くからの伝統ブランドを相次いで消滅させた。皮肉なことに、今、残っている長寿モデルは吸収したプリンス自動車の日産スカイラインだ。プリンスの前身、富士精密工業がスカイラインを発表したのは1957年4月24日である。東京・日比谷の宝塚劇場で、日本初となるショー形式の新車発表会を催している。
現行のV37系は、スカイラインとしては13代目だ。日本ではかつてほどの人気はない。が、海外では「インフィニティ」の人気モデルになっている。日本ではスカイラインの名に引かれるファンも多いから、今も販売を続けているのだ。
日産が生んだ、日産フェアレディは日本でもっとも長い歴史を誇るスポーツカーである。海外向けに生産されたダットサン・スポーツSPL212は日本では「フェアレデー」を名乗った。発表されたのは1960年1月である。発売してすぐに車名の表記を「フェアレディ」に変更した。1969年秋にクローズドボディのS30系に進化したが、これ以降は「フェアレディZ」を名乗っている。
コンパクトカーの長寿モデルはホンダ・シビックだ。デビューしたのは1972年7月で、あのVWゴルフより歴史は古い。初代はFF2BOXの先駆けで、クリーンなCVCCエンジンを積んだことでも多くの人に記憶されている。フィットの登場によって日本では人気が薄れ、2015年に販売が途切れた。が、シビックはホンダの屋台骨を支えたクルマだけに復活を望む声が多く聞かれたのである。そこで2017年に現行の10代目を日本市場にも投入した。
軽自動車はダイハツやスズキではなくマツダ・キャロル
軽自動車でもっとも古くに誕生したのはマツダのキャロルだ。1962年に産声を上げたが、1970年に販売を休止している。その後、長いブランクがあったが、年号が平成になった1989年にブランドを復活させている。キャロルに愛着を持つ人が多かったし、親しみやすい名前だから再びキャロルの名前を使ったのだ。
キャロルを除くと、もっとも長い歴史を誇るのはスズキの本格派クロスカントリー4WD、ジムニーで、誕生は1970年4月である。4WDの基本メカニズムは、上級のジープなどと同じ本格派だ。初代モデルは商用カテゴリーだったが、1981年に登場した2代目からは乗用タイプを設定。これに続く3代目ジムニーは1998年から2018年まで、20年もの間、モデルチェンジしなかった。長寿モデルの代表と言えるだろう。長寿を誇るクルマはある意味、名車であり、そのメーカーを代表する顔でもある。